21.やさしく抱いて ページ22
｢……ちゃんと、っ……、｣
｢わかってる｣
ユリさんと約束したから、
甘えずに言おうって、
喉の奥から声を出すのを
貴くんはまた、被せるように言う。
｢時間かかるかもしれない……
もしかしたら、
どんだけ時間が経っても
淋しいは思いさせちゃうかもしれない｣
貴くんがはじめて口にする
『葛藤』の時間のこと……
｢でも、俺も頑張るから……
ソラは、ソラのままでいて……｣
｢うん……｣
言葉にするのが不器用な貴くんの声と
心臓の音が聴こえる。
どっきんどっきんって、
ゆっくり動く貴くんの音が
そっと離れて
変わりにしゃくりあげてた私の口を
はちみつみたいな味が塞ぐ。
｢んっ……｣
久しぶりの感覚が
こんなひどい顔で恥ずかしい。
私の喉はまだ涙から復活していなくて、
苦しくてキュッて音を立てるから
貴くんはそっと口を外した。
｢ふ……喉なってるよ｣
｢貴くんがならしたの……｣
｢えー｣
｢えーじゃないもん……｣
そういえば、まだお昼すぎ……
｢貴くん、お仕事は……？｣
あのときの夢の中とおんなじ言葉を言うと、
貴くんは時計を見上げて｢やっべ｣って顔をした。
｢えっ……もしかして、このために……｣
わざわざお仕事の合間にきたの……？
｢……今じゃないとダメだと思ったから｣
焦った顔からふいに
真剣な顔をして言う。
こういう誠実なところに……
私は惚れたんだよ……。
｢今日……ここ泊まってく？｣
｢え、いいの？｣
｢ん、帰ったら、ちゃんと抱きしめさせて｣
｢……やさしくしてね｣
｢どうかな。
……って、抱かせて、じゃねーよ。『抱きしめさせて』。ソラは変態だな｣
｢えっ、貴くんに言われたくない｣
｢おい、どういう意味だよ｣
ふふって怒った真似をしながら笑って、
また焦った顔に戻った。
｢もう、行かないとやばいわ｣
｢うん、気をつけて｣
｢おう｣
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凪紗。 - さなさん» 身に余る言葉をありがとうございます。励みになります。これからもどうぞご覧頂けると嬉しいです。 (2019年6月17日 0時) (
レス) id: ce83842b8b (このIDを非表示/違反報告)
さな(プロフ) - 最高な作品です！この作品は、もっと評価されるべきだと思うくらい、最高です！！！これからの更新、楽しみにしてます。頑張ってください。 (2019年6月16日 21時) (レス) id: d6e98db13a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：凪紗。 | 作成日時：2019年6月13日 12時
