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テストの一件があってから、Aのバカさは事務所中に広まって、
会社の人からAは1日2時間しっかり勉強することが取り決められた。
Aは最初こそ「お芋のせいだからね」と何かを僕のせいにしていたけど、
小テストや成績関連のことになると絶対に僕のところに来てノート写させて、とか、範囲どこ、とか、頼ってきた。
僕はそれがとても気持ち良くて、勝ち誇った気分になった。
「ジミナ、本当にAと仲良しになったねえ」
ある日の放課後、練習室に向かう途中、テヒョンが言ってきた。
「なってないよ、ぜんっぜん」
僕は覆いかぶせるように返した。
「そう?Aの口数、絶対増えたよ」
テヒョンは軽いステップで僕の目の前を後ろ向きで歩く。
彼はいつももたもた歩くか、こうやってちょろちょろ歩くかで、まっすぐ前を向いて歩かない。
「仲良くなったとしても関係ないじゃん、それ」
「いやぁ〜、あるよ、」
英語はナムジュニヒョンに聞きに行ってるみたいだし、ヒョン喜んでたよ、と言うテヒョン。
僕にはなにも有益じゃないけど、ヒョンがいいならそれでいいか、とも思った。
練習室には誰もいなかった。
Aはきっと図書室かどこかで自習をしている。
僕は爆音で音楽を鳴らして、今課題のステップを練習した。
初めてAが踊っているのを見たときのステップ。
僕にはまだまだ、ものにできない。
Aの毎日2時間のロスこそが、僕がAを超えられるチャンスだ。
僕は知らないうちに、Aを最大のライバルのように思っていた。
練習生になってから、毎日必死に練習した。
それはデビューを夢見ていたからというよりかは、
何もかも僕より勝っているAに、どうしても負けたくなかったからだ。
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作者名:ヤコ | 作成日時:2019年1月9日 17時