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「……ばか、そんなに笑わないでよ」
5分間くらい、笑いが収まらなかった。
2点って。2点。しかもこれは1問3点だから、先生がお慈悲でくれた2点だ。
いつもクールでなんでもできますみたいな顔をしているAが、2点。
傑作だ。傑作すぎる。
そして僕に笑われてうずくまっているAを見るのもたいそう愉快だ。なんて気持ちがいい。
「あー、あーほんと、ほんっとうに、」
僕は溢れる涙を拭きながら、それでもこみ上げる笑いを我慢できなかった。
「…あんたって本当性格悪い」
「お互いさまでしょ？」
「そうだけど…」
「認めるの？」
息を整えながら、階段を下る。途中で何回か吹き出した。
靴を履きながら振り返る。
Aはばつが悪そうな顔で立っていた。
「あー、A、これは指導が必要だ」
解答用紙を手渡すと、ぱっと取られる。
「…公式が分かんなかったんだもん。それが分かれば全部解けたし」
公式が分かんないってなに？覚えるだけじゃん、と言い返す。
Aはロッカーからローファーを出して履き替えた。
「覚えるだけができないの。他のことで頭がいっぱいなんだからお芋と違って」
「はあ？僕はちゃんと平均は取ってるよ」
「勉強の平均はね。ダンスだってまだまだじゃん。私はそっちを頑張ってるんだから」
顔を赤くして、怒っているのか恥ずかしがっているのか、あーなんか、こいつにも可愛いところがあるみたいだ。
「今日だって開始10分で寝てたじゃん」
「そ、」
それは、と言いかけて「…寝た、けど」と口ごもる。
「明日の教科は余裕なの？」
「…ぜんぜん。1ページも触ってない」
だろうな、と思った。
僕とテヒョンは宿舎で12時まで勉強してたけど、ちょうど寝る13時になってAが練習から帰ってきていた。
「今日は練習室じゃなくて宿舎に帰ろう」
「…なんで？」
「勉強見てあげるよ、僕が」
それとももっかい2点取る？と聞くと、Aは深いため息をついた。
「……私、ジミンのこと本当嫌い」
Aが僕を名前で呼ぶのは、初めてだった。
その日は結局宿舎に帰って、Aと課題をした。
Aは何度も脱走を試みたけど、全てほかのみんなに阻止されていた。
次の日のテストで、Aは見事15点を記録した。
「初めて2桁取った…」と自分の解答用紙を前に固まるAだけど、一度も礼は言われなかった。
僕は、大嫌いなAと少し距離が近くなった気がして、それだけで満たされた気分だった。
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作者名：ヤコ | 作成日時：2019年1月9日 17時
