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「……ジミーン」
気が付くと制服姿のテヒョンが学生リュックを背負って練習室に入ってきた。
「もう朝だよ」
僕は息を切らしながら、「え?」と爆音の音楽の間にはさまったテヒョンの声を探した。
「もう朝だって。学校行こう」
それでも僕が踊りを続けるもんだから、テヒョンはスピーカーの電源をぶちっと切った。
汗がだらだら垂れて、着ていたタンクトップは色が変わっていた。
「…練習の虫にでもなった?」
テヒョンは眠そうに目をこすりながら、無造作にセットされた髪をガシガシ掻いた。
スマホで時計を確認したら、本当にもう、7時半を回っていた。
「今日は行かない、学校」
スマホをぽんとその辺において、キュッキュと靴を鳴らしてステップを踏む。
だめだ、だめだ。どうしてもできない、Aのステップ。あいつはあんなに簡単にやってのけるのに。
「それはだめだよジミナ」
「…なんで。僕は全然まだ踊れないんだ。学校なんかいってのんきに勉強してる場合じゃない」
といいつつ、思うように体が動かない。
まるで水中で息をしているみたいに、おもりがついたみたいに、浮かせるとすぐ地面についてしまう足。
テヒョンはしばらくそれを見て、そこにどすっと座った。
なんだか不機嫌そうだったけど、僕も僕でへんなスイッチが入っちゃって、お互い何も言わなかった。
数分経ってしびれを切らしたのか、テヒョンが僕に聞こえるか聞こえないかの声でつぶやいた。
「、昨日さぁ」
僕はわざと大きい声で「ええ?!」と聞き返した。無性に腹が立っていた。何に?自分にだ。
「昨日さぁ!」
テヒョンもすごく大きな声で返してきた。
「昨日さぁ、―――…Aに、なに言ったの」
僕は足をピタッと止めた。
「……昨日、A、夜、泣いて帰ってきた」
テヒョンは鏡越しに僕を見た。
すごく、怒っている目つきをしていて、それはAの昨日の目に似ていた。
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作者名:ヤコ | 作成日時:2019年1月9日 17時