強いて言えばあの人 ページ11
それからどれほど時間が経っただろうか。私の体感的には何時間というほどの長い間だったように感じるが、不思議なことに時計の針は数分しか進んでいなかった。
『…あ。消灯時間過ぎた。そろそろかな』
小さな呟きと同時に情報管理室のドアが開いた。選手として参加している彼らとは別のデザインの配布スウェットに身を包んだ彼女たちは、なんだか落ち着きがなかった。
『あの…どうしましたか』
「え?な、何が?」
『あ、いえ…その。なんだかそわそわしているように見えたもので…』
「私たちもちょこっと緊張してるのかもね。食堂じゃあ、あんまり会話が続かなかったから」
「Aちゃんに無理させてるんじゃないかって、あの後すっごく心配だったんだよ?」
リリちゃん、ハルさん。よくわかっているではないか。ええ、会話は続きませんでしたとも。無理してましたとも!…とは口が裂けても言えないのがなんだかもどかしい。いつしかそんな軽口を叩けるような仲になれるといいと少しだけ思う。
『あー…いや、そんなに無理はしてないっす。そもそも人と話すのが久しぶりだったから、ってのもあるから。き、気になくていいですよ』
「本当?だったら尚更、いっぱいAちゃんとお喋りしなくっちゃだね!」
「ふふ、リリったらはしゃぎすぎじゃないかい?…それじゃ、早速映像見てこうか。A、準備をお願いしてもいいかな」
満面の笑みを向けるリリちゃんと、お淑やかに笑うハルさん。2人の周りに花が見える。…やっぱり、悪い人のようには見えない。でも、そういう人たちこそ信じちゃいけない。ここで彼女たちを信用してしまったら…。私は、今までの私を否定することになってしまうから。今は
『だ、大丈夫ですよ。…どの選手から見ていきましょうか』
「うーん…じゃあさ、1人づつ気になる選手を順番にピックアップして見ていかない?」
「いいね!Aもそれで大丈夫かい?」
『あ、はい。別に構いませんよ』
「決まりだね!…誰から選ぶ?」
『こういうときは言い出しっぺの法則というものがありましてね…』
「そうね。リリから選ぶべきだよねえ」
「わ、わかったよ。でも、そう言われてもなあ…。“この人!”っていう人あんまりいないから…。まあ、強いて言うなら、千切くんかな」
後半になるにつれ、ゴニョゴニョと声が小さくなっていくリリちゃん。少し照れているところが愛らしく、流石ヒロインと思わざるを得なかった。
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ブックマーク(プロフ) - 最高です!応援してます! (2023年2月13日 2時) (レス) @page14 id: 30dece2dde (このIDを非表示/違反報告)
るぁ - うぁ好き…夢主ちゃんが凄いのに謙虚だったりほかの二人も性格が良さそうなのがめっちゃ好き…とりあえず付き合ってください(?)今後の展開楽しみです! (2023年1月30日 19時) (レス) @page9 id: b6e4bb87a9 (このIDを非表示/違反報告)
水晶(プロフ) - うわ、面白い………………!神作品ありがとうございます!!笑応援しています! (2023年1月20日 20時) (レス) @page6 id: 001dbf15df (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美少女に生まれ変わりたい一重モンスター。 | 作成日時:2023年1月17日 0時