58.キャンバス ページ9
.
清々しい春の陽気。窓を開けると、
桜が咲いているのが見えた。
そして、忠義くんが
『入学式行ってくる』と言い、
大『もうすぐ来てくれると思うねんな』
と呟くと、インターホンが鳴って、
女性二人が家に来た。
「まかせて、しっかり見ておくから」
大『うん。お願いします。』
彼が子供たちと出ていき、家には私を入れて3人。
［はじめまして、私、南花陽。よろしくね］
《私は、喜多見友恵だよ、何かあったら言ってね》
春の陽気と共に家にやってきた2人は
私にそう自己紹介をした。
小鳥のさえずり、春の風。
ヒラヒラと舞う桜の花びら。
入学式。
その幾つかの材料は、私の記憶に…
桜が舞い落ちるように柔らかく
ひとひら
そう…ひとひら。
私の記憶に、ひっそり落ちてきて、
波を打つ。
「…いい なまえだね」
わかるよ。
いま、わかるよ。
［…そう、かな、やだなあ、照れちゃうじゃん。］
あえて、あの日と同じことを言ってみたの。
「“こんな可愛い名前の子が怖いなんて、
あるわけないよ”」
［A……？］
「“喜多見さんて、いつも本読んでるけど、
何の本読んでるの？”」
《…A、》
「私たち、こうやって始まったよね」
私が笑うと、花陽と友恵は泣いて抱きついてきた。
［そうだねっ、そうだね］
《そうだよ》
ぎゅうっと抱きしめ合うと、
「わたしの最高の親友だよ」
涙が溢れてきて。
わかってる。決してあの頃には戻れない。
だけど色褪せない、消えることは無い。
［ありがとうっ］
私たちだけの “あの頃”がある。
あの頃、なにもなくても 楽しかった。
お金が無くても、夢がなくても、
欲しい物が買えなくても、楽しかった。
目には見えない幸せが、私たちを取り巻いていた。
ママにもパパにも言えないことだって、
友恵や花陽になら 話せた。
わたしはこのふたりと、青春をした。
そうでしょ？
「ねぇ 大好き、だよっ。」
［バカ、私らのが大好きだから！］
誰にも汚すことのできない、私たちだけの青。
私たちだけのキャンバス。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1224人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「関ジャニ∞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あすとなん(プロフ) - 少し時間は経っていますが、ここ数日でゆったり作品を読みました。素敵な作品で最後の方はめちゃくちゃ泣いてしまいました…夢小説でここまで泣いたのは初めてです。言葉選びなど何もかもすごく綺麗で出会えてよかったと思えるような作品でした！ありがとうございました (2023年4月16日 0時) (
レス) id: 98485f7244 (このIDを非表示/違反報告)
みき(プロフ) - Twitterから来てみました！大号泣です。作品でここまで泣いたのは初めてです。素敵なお話しありがとうございました。 (2020年12月28日 18時) (レス) id: d174202b3c (このIDを非表示/違反報告)
madokaarashi191(プロフ) - 何日か前から読み進めてきました。最終章はずっと泣いてました、泣素晴らしいお話です！また読みます！頑張ってください！ (2019年8月18日 0時) (レス) id: cda95919fc (このIDを非表示/違反報告)
りん - 今日初めて読みましたがものすごく感動しました、、泣 涙が止まりません、、、こんなに素晴らしいお話を書いてくださってありがとうございました。!!これからも頑張って下さい！ (2019年6月8日 16時) (レス) id: b994653d42 (このIDを非表示/違反報告)
とここ。(プロフ) - とっても素敵なお話でした！途中から涙が止まらなくなりました！！また後で読み返しに来たいと思います！こんなに素敵なおはなしを、ありがとうございました！！！！ (2019年5月1日 12時) (レス) id: 9d6320b50f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：∞くらゆい∞
| 作成日時：2019年3月13日 22時
