にかちゃんだよ〜とは言えない③ (ページ36)

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うちのマネージャー② ページ36

sideめぐろ

ドラマに映画に演技仕事が多くなって、メンバーとの仕事の割合が減っていたオレ。

メインのマネージャーであるAさんは個人仕事にも付いてきてくれることはあるんだけど、複数人のメンバーが参加する方に基本付いていく。

だから会う機会が減っていて。朝ドラの撮影のとき、珍しく付いてきてくれたときはドラマのタイトルのように舞いあがってたんだよね、オレ。

それを舞ちゃん役の福原さんに見抜かれてめっちゃ恥ずかしかったな。

で、そんなオレもようやく個人仕事が一段落ついて。今日は事務所に用があったから朝から出社。

すると偶然ながらかなり興味を惹かれる……だけど見たくはない場面に遭遇してしまった。こそっと隠れて物陰から様子をうかがう。

「藤堂さん、今日飲みに行かない？」

「飲み？他にどなたがいらっしゃるんですか？」

「え、えーと、サブマネの田中さんと、制作の河井さんと……。」

事務所の男性スタッフさんに飲みに誘われているAさんの姿。

さっきのスタッフさんの口ぶりからして、他の人は絶対に誘っていない。Aさんと二人きりで飲みたいって思ってるでしょ、その顔。

「田中さんって明日朝早いから今日飲めないんじゃ……。」

「あ、ああ！飲むっていうかご飯食べるがメインかな！」

Aさん、さすがにサブマネさんのスケジュールも把握済み。相手のスタッフさんが慌てて訂正しちゃってるし。もうここまでくれば、最初から二人の想定で確定。

よし、Aさんを久しぶりに拝めてなんか気分がいいし、Aさんも乗り気ではなさそうだからちょっと割り込んでみるかな。空気なんて読まないよ。

「お疲れ様です。すみません、Aさん、打ち合わせ……。」

「あ、ああ！そうでしたね！……すみません、今日終わるの遅くなりそうなのでパスします！」

「え、ああ、はい……。」

よし、邪魔者はいなくなった。ありもしない打ち合わせを作り上げたら、Aさんも乗っかってくれて。

しかもオレがAさんって下の名前で呼んだとき、名前……って小さな声が聞こえてきた。悪い人間っぽいけど、その反応ちょっと嬉しかった。その人よりオレの方が仲いいんだなって。

「ありがとうございます。断り方考えたので助かりました。」

「……結構誘われるんですか？」

「結構ではないですけど誘ってもらうことは度々。」

ただ、気兼ねなく誘えるスタッフさんが羨ましくも思えた。