にかちゃんだよ〜とは言えない② (ページ8)

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巻き込まれたゆり組ページ8

sideわたなべ

今日はTikTok用に短い動画を撮ることになってるんだけど、それが色々激しく動いたあとで。シャワー後に集合と言われた部屋に行ってみると、阿部ちゃんとAさんがいた。

Aさんが撮影係なのは知ってたというか、本人からここに来いって言われたから分かってたんだけど、他のメンバーについては聞いてなくて。

にしてもさ、阿部ちゃんとAさんってちょっと空気感似てるんだよね。

優しい感じしてるけど要所要所ではキリッとしているというか。たまに底知れぬ何かを感じるというか。同じ93年生まれだし？

オレとしては、ふたりきりでいてもいつもの感じで話していた二人がうらやましくて仕方ない。ほんとオレ、Aさんとふたりになるとだめすぎて。

「お、もう揃ってるのかな？」

「だてさまー！」

と、最後のメンバーらしい涼太が現れた。阿部ちゃんがすごく嬉しそうな声で涼太を迎える。揃いましたーと声を上げたAさんもまた心なしか弾んでいるように聞こえた。

……ああ、この二人なら、あれか。

「えっと、今回はAちゃんにお願いして、この3人でThis is LOVEの振付動画を撮ることにしましたぁー！」

阿部ちゃんとAさんがいぇーいと手をぱちぱち叩いている。……オレと涼太が一緒にいるところを見ることに何故か強い喜びを感じているこの二人。俗に言うゆり組担。

涼太と顔を見合わせると、なんとなくお互いが同じこと思っていると分かった。これは付き合うしかないな、と。

「Aちゃん、見た？アイコンタクトしてたよ！」

「見ました！さっそく撮りましょ！」

そう言ったAさんは三脚にスマホを固定し、阿部ちゃんはパイプ椅子をカメラの前に持ってきて。二人が距離感を調節している最中、涼太がオレのそばにやってきて。

「阿部はうまいことAさんに近付いてるね。翔太はいいの？」

「な、なんでオレが関係あんだよ。」

「好きなんでしょ、Aさんのこと。」

「なっ……！」

りょうたぁ！このタイミングで言うんじゃねえよ！ていうかもろバレしてるし。千賀くんにも北山くんにもバレてるから、気付く人は気付くんだろうけどさ。

準備が終わったということで、阿部ちゃんから手招きされる。そして阿部ちゃんの座っている後ろにオレと涼太が並んで撮影開始。

カメラの後ろにいて満面の笑みのAさん。怖いくらいに目が惹かれた。