にかちゃんだよ〜とは言えない② (ページ6)

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真夜中の帰宅② ページ6

sideにかいどう

寝ていたけれどなんとなく目が覚めた。時計を見ると2時10分。もちろん深夜だ。

オレが寝る前……2時間以上前、まだ妹は帰ってきていなかった。そして今も。

昨日の19時過ぎに今日は遅くなるとメッセージが届いていたが、こんなに遅くなるとは思ってなくて。この時間に珍しく目が覚めたのも、妹のことを気にしているせいかもしれない。

何かメッセージが届いていないかとスマホを見れば、ちょうど2時、つまり10分前に今から帰るとのスタンプが来ていた。

この時間までやってたのか。何してたんだよ……仕事なのは分かってるけど。

よーし、どうせAが帰ってきたのを見ないと落ち着いて寝れないから、起きとこ。あとちょっとで着くだろうし、マンションの外で待っておこうかな。

スマホとカギを持って、念のためマスクを装着して部屋を出、エレベーターで1階へ。……その間に下で待っておくとメッセージも送って。

マンションの外に着くとまだ来ていないようで。この時間だし道路は空いてそうだからあと少しかな。

背伸びをして待っていると、車のライトがこちらを照らし出し始めた。……ん？タクシーではない？

Aではないかもしれないと思い、柱で姿を隠すようにして様子を窺うと、車はちょうどマンションの前で止まった。

後部座席から人が降りてくる。……Aだ。事務所の誰かに送ってもらったんだろうと思い、近くには行かないが柱の陰から覗いてみると。

……あれ、岩本？助手席の窓を開けて挨拶している姿が見える。少し離れてるから声は聞こえないが、挨拶だけだからすぐに車で走り去った。

そのタイミングで岩本を見送っているAの方へ足を進める。

「お疲れ。めっちゃ遅かったじゃん。」

「起こしちゃってごめん。ライブが近いからねぇ。」

「オレが勝手に目覚めただけだから。……事務所の人？」

「うん、岩本さん。タクシーで帰ろうと思ったら送ってくれた。」

さっきのを見ていなかった体で誰なのか聞いてみたら、誤魔化すでもなく普通に岩本だと答えたA。つまり、本当に送ってもらっただけでやましいことは何もないということ。

前々からなんとなく距離近いなと思ってはいたけど、ほんとうにただの仕事仲間でそれ以上ではなさそうな感じだ。

少なくとも、A目線では、だけど。……あっちはどう思ってるんだろうな。