名前違いの行方【緑】 (ページ7)

今日:18 hit、昨日:4 hit、合計:40,377 hit

名前違いです③緑ページ7

.

ドームに入る前に那須一家を紹介してもらった。

……なぜ紹介してほしかったのか。それはただ那須がどんな環境で育ったのか、あのテレビ通話でほろ酔い状態だったご家族の素の状態を見てみたいという好奇心からだ。

実際に会ってみれば、お酒が入っていない状態でも割とゆるい雰囲気。特にお姉さんとは仲良さそうで。

俺には姉妹がいないから分からないけれど、お姉ちゃんいたらどんな感じだろうなと想像してしまう。……あ、なんか尻に敷かれそうな気がしてきた。

試合中。那須は当然のごとく今着ているユニフォームのチームである巨人を応援している。

そこまで野球に詳しくないオレでも知っている、坂本選手のファンらしく、この座席からよく見える守備中の坂本選手をジーッと目で追っていて。

ただ、ウグイス嬢さんが「4番、サード、村上。」と読み上げると目線が移動した。

「村上くんのときだけ打席ガン見するんだ！」

「姉ちゃんが村上くん連呼してるとだんだん気になってきてさ。つい見ちゃうんだよね。」

浮所もそんな那須の動きに気づいたらしい。お姉さん、そういうつもりはないんだろうけど、なんとか効果ってやつで「推し」を共有させちゃったんだろうな。

試合を見ながら「選手見てると照思い出すねー、ガッチリしてる人多いなー」なんて、しばらく佐久間と他愛もない話をしていると、浮所と那須の話が耳に入ってきた。

「こういうアスリート系がタイプなのかな、お姉さん。」

「浮所が知ってどうすんだよ。」

「いやー、人によって好み違うからさ、お姉さんはオレたちみたいなのはタイプじゃないのかなーって。」

「まあ、そうだな。」

「やっぱり？だってオレ何回も会ってるのにあんまり興味なさそうなんだもん。」

「弟の同僚に興味湧くと思うか？」

「えー、オレは興味あるよ、那須のお姉さん。」

佐久間も聞こえていたらしく、「え？」っと二人で顔を見合わせた。この興味あるってどういう意味なんだ？浮所は不思議なところあるからそのまま受け取っていいものだろうか。

なんとなくだけど、俺もお姉さんの好みが気になってきた。そしてお姉さんが応援しているチーム、ヤクルトのことも。

……あれ、これもなんとか効果かな。オレにもその効果が出てしまったのかも。