ファンになってた�⇔� ページ28
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今日はライブの日。首都圏の会場だから、今日も何人か見学に来ていると聞いている。
佐久間もその話を聞いたようで。
「そういや、今日は浮所と那須が来てるんだって？あいつら仲いいねー。」
「昨日直接挨拶に来てくれたんだよね。」
「おーさすがクイズ部。部長としていいとこ見せようぜい。」
那須のお姉さんと少し関わりがあってから、もう何ヶ月も経った。今じゃ那須の名前だけ聞いてもすごく落ち込むなんてことはなくなって。慣れって怖い。
ふとした時にどうしてるんだろうなって思ったりもするけど。
「よし、今日もいっちょやりますか！」
「だね！」
佐久間とハイタッチして最初の立ち位置へと移動した。
ライブが始まった。メインステージでゴリゴリのダンス曲から始まってバックステージに移動しながら歌ってみたり、せり上がる小さなステージに乗ったり。
MCでは見学席に来ていたジャニーズ関係者のことにも触れたり。浮所とか那須とかね。
そしてMCも終わり、ライブは後半戦へ。
ファンサできなかったところにファンサしながらぐるぐる歩いていく。
オレのうちわを見つけたら、いつも以上に手を振る速度が早くなっちゃうよね。ありがたいことにたくさん見かけたから、モーターかってくらい手が動いてる気がする。
オレのファンだとわかる子はひとりひとりできるだけ顔を見てファンサやってるんだけど。
……あれ？見間違い？
思わず足を止めてしまった。ヤバイと思ってすぐに歩き出すけど、頭の中はさっきオレのうちわを持っていたあの人のことで大部分を占めてきて。
……Aさん？
それに笑顔だったんだけど、……笑顔だったんだけど。泣いているように見えた。
他のファンの子と同じようにライブのチケットを当てて、こうしてオレのことを見に来てくれて(うちわがオレだったからそう思ってもいいよね)。
……それでオレは泣かせてしまったのか。
うん、オレのせい。
こっちから勝手に連絡して思わせぶっといて、都合が悪くなっから連絡するのやめて。
ほんとひどいやつだ、オレは。
そこからのオレの記憶はもうあやふやで。気付いたら終わっていた。
なんとか笑顔作って手を振ってたけど、終わった瞬間、ものすごい勢いで肩が重くなった。
……オレはアイドルで、あっちはファン。もうあの人は割り切ってる、きっと。
……あーなんか無理だ、この状況。
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作者名：みどりの | 作成日時：2022年8月22日 21時
