出会ってはいけない人�⇔� ページ25
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各グループの楽屋に差し入れを持っていって、ようやく一段落がついた。
今日はJrのいくつかのグループ合同のライブの見学に来ていて。
他に誰か見学に来てるかな、そんなことを思いながら見学席に向かう。ここから見える感じだと誰かのご家族のようだ。
挨拶はしておこう、そう思って先に座っていたお三方に「こんにちはー」と言いながら自席に座ると。
「こんにちはー。」
「どうもこんにち……は……。」
顔を上げて挨拶してくれたのは見覚えのあるご家族。那須一家だった。
ご両親は挨拶のあと「あら！雄登がお世話になってます。」と続けてくれたんだけど、Aさんは挨拶の途中で固まって、なんとか挨拶できたと言う風で。
表情からして驚いて言葉が続かなかったんだろう。
……かく言うオレも、顔が引き攣ってしまったかもしれない。まさかまた会えるなんて思ってなかった。
忘れようと思っていたのに、結局忘れることはできなくて。そんな中でこうしてまた顔を合わせてしまえば余計だ。
幸い、Aさんとオレの席の間には空席が2個あるので、そう簡単には視界に入らないだろう。それに今日はJrたちを見に来たんだから、横を見ることなんてないはずだ。
……なんて思ってたくせに、ことあるごとに真横を向きたくなる衝動に駆られる。集中すべきはステージ！そう言い聞かせる。
でも気になって仕方ない。何せ連絡を絶ったのは本心からでは無いし、それが一ヶ月以上も続いているのだから。
Jrが盛り上げてくれているし実際盛り上がってるのに。オレの気持ちだけ沈んだまま。本当に申し訳ない。もちろん表向きはノリノリを装っているけれど。
まさかこんなに引きずるなんて思ってなかった。
そして今回の公演が終了した。早くここを出て、気持ちを切り替えねば。慌てて席を立つと、持っていた空のペットボトルを落としてしまった。軽いためか転がっていく。
そしてオレが拾うより前。
「どうぞ。」
Aさんが拾ってくれた。また目が合う。これ以上見ているのは危ない。そう思って慌てて手を伸ばす。
「ありがとうございま……す。失礼します！」
手が触れた。
たったそれだけなのにバカみたいに触れた部分が熱くなってくる。もうだいぶ大人なのになんだよ、これ。
その熱が全身に伝わって顔に出てしまう前に。お礼を言ってすぐ、足早にその場を去った。
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作者名：みどりの | 作成日時：2022年8月22日 21時
