君の声から始まった② (ページ19)

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そして始まる④弟ページ19

side弟

姉ちゃんの突発仕事で出来なかったあの日の代わりに今日勉強会をすることになった。今日のメンバーはオレと姉ちゃんと阿部ちゃん。

……なんだけど。

「ねえねえ、ここの答えってこれ？」

「……うん、合ってる。」

ちょっと空気感がいつもと違う。阿部ちゃんは通常運転っぽいんだけど、姉ちゃんが極力顔を上げないでいる。……どういうことだ？

更に様子を見てみると、阿部ちゃんがいつにもなく姉ちゃんに話しかけているようで。

対して姉ちゃんは少しそっけないように見える。ただ、この角度から見える姉ちゃんの顔は心なしか赤い。

えーとこれは。

「今日顔ちゃんと見れてない気がする。」

「いやー、そんな見られると顔上げづらいというか……。」

阿部ちゃんはなかなか顔を上げない姉ちゃんを見てなんだか楽しそうだし、姉ちゃんはきっと照れている。

……弟であるオレがいる目の前で堂々とイチャイチャしてない？これ。そんなつもり無いだろうけどそうとしか見えないぞ。

「やっぱりかわいいなぁ。」

「……あー！そんなに言わないでー！」

照れ過ぎ姉ちゃんやばいな、弟のオレでもかわいく見えるし。そして平然とかわいいと言ってくる阿部ちゃん。

そこからは姉ちゃんが吹っ切れたのか、いつもどおりの空気感になり、勉強もそこそこ進んだ。

そして、阿部ちゃんご帰宅の時間。玄関のお見送りにはオレ。姉ちゃんは取引先から電話が入ったので自室に引っ込んでいる。

「Aちゃんさ、本気でもらってもいい？」

帰り際、あざとかわいくそんな宣言を受けた。阿部ちゃんのことだからこれは嘘じゃない。目の奥が本気だったから。

もらうも何も、姉ちゃんは俺のものでも誰のものでもない、姉ちゃん自身のものだ。

「本人に聞いてよー。オレには決められない。」

「本人の気持ち優先……そうだよね。今度会ったら聞く。」

そう言って挨拶をして帰っていった。もちろん姉ちゃんは誰のものでもないけど、今はまだ家族と違う誰かに渡したくない。けれど阿部ちゃんならば。

「悲しませたら一生恨むわ。」

阿部ちゃんが出たその後。誰もいない玄関でドアに向かってぼそっとつぶやいた。