トリガー�ξ� ページ32
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その日はクロミちゃんがいつもローテンションになっている歌のレッスンの日。
ただ、ローテンションでもときたまかなり調子がいい日がある。いつもではないけど。
そんな日は大抵いつもより集中しているからか、ダンスのときはよくおしゃべりしているオレたちSnow Manのメンバーとも、他のJrともほとんど喋らない。
先輩方のバックダンサーとしても引っ張りだこでダンスのことならクロミちゃんに聞けってJr間でもよく言われているけれど、歌となってしまうとこんな感じだ。
この日は講師の方が実力の確認のためか、どんな曲でもいいから好きな曲を1番だけ歌うっていうのがあって。クロミちゃんももちろん1曲歌ったんだけど。
「……まさか。ね……。」
クロミちゃんを迎えに来たAちゃん。好きな曲として歌ったのは、クロミちゃんも好きな曲として歌っていた「声をきかせて」。あまりにも歌い方がそっくりで双子ってすごいって思ったのも束の間。
偶然マイクを持っていないAちゃんの左手に視線を動かしたとき、あの日のことがフラッシュバックしてきた。
歌っているときやダンスの練習中、左手の人差し指と中指でリズムを取る。それがクロミちゃんの癖だった。そしてその左手の甲にはほくろが2つならんでいる。
だが、あの日のレッスンでクロミちゃんの左手が偶然目に入ったとき。その2つの要素がなかったのだ。
リズムを取ることに関してはそんな事があるかもしれない。でも身体的特徴であるほくろに関してはその日だけ消えるなんてそんなことあるだろうか。
オレの目の調子が悪かったり照明の角度的に見えないだけなのかな、それで割り切っていたJr時代。
でも今。Aちゃんの歌声を聴いてしまった。普通は思いつかないだろうけど、この歌声ならあり得るかもしれない。
……あれは、クロミちゃん……フータではなかったんだ。きっとAちゃん。
二人の間に何があったかは知らないけれど、とりかへばや物語みたいに得意を活かして入れ替わっていた？
Jr時代に聴いたクロミちゃんの声をきかせて。あれはAちゃん……？
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作者名：みどりの | 作成日時：2022年8月8日 22時
