灰色の花 (ページ15)

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第十二章ページ15

体に意識が戻ると、真っ先に聞こえたのは、酷く美しい、けれど、何かにすがるような少女の声だった。

少女「グゾルはもうじき死んでしまうの...
　それまで私を彼から離さないで」

次に聞こえた言葉は、異常とも言える言葉だった。

少女「この心臓はあなた達にあげていいから...！」

ただ、ソフラは異常とはおもわなかった。いや、おもえなっかった。
これを異常と言うのならば、自分は他ならぬバケモノと何ら変わりないのだから...。

それから、少し話を聞いていた。
手短に話すと、

昔、マテールに一人の捨て子がイノセンスの持ち主、ララと出会い、共に過ごしてきた。
その捨て子が人形と思われていた老人、グゾルだった。

でも、そのグゾルはもうじき死んでしまうようだった。
だから、グゾルが死ぬその時まで一緒にいさせて欲しい、とのことだった。

ララ「最後まで人形としてうごかさせて！
　お願い」

「ダメだ」

すると、ソフラと同じように聞いていたのか、神田がむくりと起き上がった。

神田「その老人が死ぬまで待てだと...？
　この状況でそんな願いは聞いて聞いてられない...っ」

神田は辛そうに話していた。

神田「俺たちはイノセンスを守るためにここに来たんだ！
　今すぐその人形の心臓を取れ!!」

その時、ソフラが操り人形のように起き上がり、

ソフラ「そうです。守るために来たんです。
　だから、取らずとも守ればいいんです。」

ソフラの瞳には光は無かった。

アレン「ソフラ…？」

虚ろな目をしたまま立ち上がり、

ソフラ「だってそうでしょう？
　肉体が違うだけで、ララさんはアレンとさほど変わらないですよ？
　ララさんから取るということは、アレンから命とイノセンスを取るのとかわりません」

「それでもいいんですか」と、光の無い目でほほ笑んだ。

ソフラ「それに、犠牲ばかりの戦争なんて悲しいだけですよ？」

神田は、ソフラをいつもよりも鋭い眼で睨んだ。

神田「ならば、お前が犠牲になるってでも言うのか？」

ソフラ「ええ、別に構いませんよ？
　僕は、それで彼らが望んだ最後を迎えられるのならば」

その時、ララが目を見開いた。別にソフラの言葉に感動したからではない。
その場では何かが割れる音と肉が裂ける音がした。