山奥にて 四 ページ5
とヤケクソで念じた瞬間。
俺の身体を包み込む様に炎が燃え上がり、駆け巡った。
「っえ、ギャァァァァッッ！？！？ほ、焔雷さん！？」
「何だァ！？」
一見熱そうに見えるが、全く熱くない。
「あ…うん、行ける！」
「へ？ちょっとッ…！？」
俺は我妻から離れ、一直線に鬼へ突進した。
そして、俺が触れると瞬く間に身体の炎は鬼へ移った。
「グギャァァ！？なんだァ！なんなんだこれはァ！！
あ”ぁ”あ”ぁっっ！！！」
苦痛を顔に貼り付けた様な表情をしながら、
燃えて身体がドロドロと溶けていく…。
お、思った以上にぐろい…。
でも、ちゃんと死んだ…みたいだ。
灰すら残さず、炎は全てを燃やした。
…燃やした？
「っ…！はぁっ、はぁ…っ！」
え、なんだ、これ…？
これ、って？
「焔雷さん！」
…振り返ると、我妻が心配そうな顔をして見ていた。
…今のは、関係ない筈だ。
「大丈夫…大丈夫だ」
「焔雷さん、今のって…？」
「…済まないが、俺にもよく分からないんだ。
あまり人には言わないでくれ、頼む」
「い、言わない！絶対！」
「…ありがとう。あ、鬼は他にもいるのか？」
「いや、今の鬼だけだと思う…」
「…なら平気だろ。暗いから、気を付けて帰れよ」
と言って、走り去ろうとしたが手を掴まれる。
「まっ、ちょっと待って！本当に此処に住むの！？」
「…俺の力を見ただろ」
「っ…でも！」
「…黙ってて悪かったが、俺は…人じゃない。
鬼でもないけど…人と一緒に暮らすなんて、
無理だろう？」
「………」
…黙り込んだが、離してはくれない。
どうするか…あ、そうだ。
これは完全に俺のワガママだけど。
「…あの、さ。我妻が良ければいいんだけど、
たまにでいいから、遊びに来いよ」
「え」
「俺はここから出ないから…まぁ、休みの時とかに
気が向いたら様子を見に来てくれ。
嫌なら、忘れてくれてもいいし」
「わっ…忘れないよ！！なんでそういう事言うの！
ちゃんと来る！毎日来るからッッ！！！」
「馬鹿、お前には仕事があんだろ」
「あ、はい、そうでしたう”ぅう”う！！」
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作者名：徒花(腐女子) | 作成日時：2023年4月8日 23時
