埋葬 -JN-

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物思いに耽りながら帰ったせいか、コンビニで何を買ったのか、帰り道をどう歩いてきたのかあまり記憶に残っていないが、当たり前のように缶ビールとつまみを買い、自宅に着いた。
習慣というのは恐ろしい。

登録しているサブスクリプションから適当に評価の高い映画を選んで、メイク落としもそこそこに缶ビールを開けた。
ぷしゅっと小気味の良い音を出しながら溢れ出る泡を口に含む。
ぼんやりと眺める映画は、評価がいいはずがあまり頭に入ってこなかった。

｢はぁ｣

何度目かのため息をついて、ごろんとカーペットの上に転がれば、次第に酔いが回り 私はそのまま眠りに落ちた。



明くる日も、そのまた次の日も
本当に大した用事はなく、部屋の掃除やら翌週の食料の買い出しなどをして過ごした。
この歳になると、友人たちも皆結婚や恋人との時間を大切にしているので鳴らない電話も特別気にならない。
というか半ば諦めの感情だ。
それに、何だか今週はどこにも行きたくなかった。

翌日の仕事の準備をそこそこにして、
日曜を手放すことでようやく何かから開放されたような気持ちだった。


｢おはようございます｣

当たり前のように月曜がやってきて、また一週間が始まる。
カバンをデスクに置いて、今日の予定を確認していると
おはようございまーすと間延びした声がして、入口を見やるとキムソクジンが欠伸をしながら登場してきていた。

金曜の出来事をふと思い出し、経理のデスクをちらりと確認すると 彼女は顔を伏せていた。
まぁ。そうだよね。心の中で納得しながら自身の準備に戻る。キムソクジンは特に私を気にかける様子もなく女性社員と談笑していた。



｢Aさん、今日の営業が終わったら早めに帰っても大丈夫ですか？｣

営業先へ向かう車の中で彼は携帯から目を離さずに言うので
どうしても どうせ良からぬ予定だろうと決めつけてしまう。

｢別にいいけど
お忙しいんですね｣

冗談のつもりで口に出したが、なんだか僻みのようなニュアンスを含んだ自身の声色に驚いた。

｢いや、商談が決まった会社の部長と飲み会がありまして｣

身動ぎひとつせず携帯を指先で押しながらそう返答された時は否応にも顔が熱くなった。
私は何を言ってるんだ。

｢あ‥‥そうなんだ｣

そういえば、私はキムソクジンの連絡先も知らない。知っているのは社用の携帯の番号だけだった。

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