埋葬 -JN-

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｢すみません、熱がありまして
今日はお休みを頂いてもよろしいでしょうか｣

携帯を置き、付けっぱなしのテレビのニュースをぼんやりと見つめる。
こんな歳になって ズル休みをする自分に呆れたが
ドレッサーの鏡に映る顔を見て そうするしかないと肩を下ろした。

昨日の雨が嘘のように晴れたその日は
梅雨明けを予感させるような空模様だった。


午前中は動く気になれず 本当に熱でも出たかな、と体温計を出してみるも 面白くなるくらいの平熱を表示するそれを放り投げ、ごろごろと過ごした。

午後になり
冷蔵庫を開けてみると綺麗さっぱり空っぽで それを把握した瞬間ぐーっと鳴る腹の虫を
こんな状態でもお腹が空くなんて、嫌になるくらい生きてるんだなぁと他人事のように感じて少し笑った。
ドレッサーの前に座り、隠せそうもない目の腫れを保冷剤で冷やしながら
適当に化粧を施す。

そして、引き出しの奥から
眼鏡と いつかキムソクジンから貰った新品の煙草の箱を取り出した。

眼鏡をかけた私は そんなに悪くなかった。

｢もちろん、中の中だけど｣

そう独りごちると、煙草の箱をパンツのポケットに入れ、私は携帯を置いたまま 鍵と財布だけを持って家を出た。

平日の昼間
普段殆ど乗ることの無いバスに揺られ スーツのジャケットを手に歩く会社員たちを横目に
私は歩いて行くには少し遠い所にあるコンビニに向かった。
いつものコンビニに行くには 酷過ぎる顔だった。

バス停のすぐ近くにあるコンビニに入り、ブラックコーヒーとおにぎりをひとつ、そしてライターを買った。

店内から外に出ると私を焼かんとする程の太陽に目が眩んだ。
手のひらで日差しを避けながら、無造作に置かれた喫煙スペースの灰皿の前で
ポケットから出した新品の煙草の封を開けた。
ふわりと香る葉っぱの匂いを嗅ぎながら一本を選び、抜き取る。

じりっと先端を焦がし
肺いっぱいに煙を吸い込むと 脳みその奥の方が麻痺するようにぼやけた。
ふーっと少し大袈裟に白い煙を空に向かって吐き出すと
風に乗り、ふっと消えていく。

一度だけの吸引を終えて
私はその煙草を灰皿の水に落とした。
そして、残りの煙草が詰まった箱を 隣に並ぶゴミ箱の入口に差し込み

目を瞑った。

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