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ベランダのガラス戸がそっと閉まると
私はキムソクジンの背中を見ずに身を整えた。
鳴り止まない豪雨の音だけが聞こえる室内でそれよりも大きく、私だけに聞こえる悲しみの絶叫に耳を傾けた。

私に出来ることはもうない。

あとは彼が身支度をしてこの嵐のような部屋から出て行くだけ。

ガラリとドアが開き、キムソクジンはゆっくりと部屋に入ってくる。
スローモーションのように見える彼の動き一つ一つをじっと見つめながら 身支度が終わるのを待った。


「そろそろ行くね」

彼は変わらない。

「気を付けてね」

この言葉も これで最後にしよう。
そう心の中で重たい扉を閉めるように一文字ずつ、はっきりと声にした。


「ねえ、Aさん」
「なに」
「今週末の予定は?」


精一杯の強がりを、最後に披露して見せろということなのか。
確かにそれはいい案だ、そう頷き


「まぁ。」


と答えると、キムソクジンは目を伏せて笑った。

玄関へ続く廊下を揃って歩き
ドアの前で立ち止まる。

「Aさんは本当に」

靴を履きながらぽつりと漏らすように呟くキムソクジンは、独り言のように続けた。

「頭がいいなぁ」

そうだ。聞き分けがよく、出来た女だっただろう。
中の中の私にしては 最高の褒め言葉を胸にしまい

「さよなら、キムソクジン」

と笑って見せた。

いつかどこかで会っても
私に気付かないでくれ。
いつかどこかで会っても
貴方に気付かないから。

ドアが開き、雨の音が更に強く耳に広がる。


「Aさん、またね」


ドアが閉まる。



もう二度と、わたしはこのドアを開けない。

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K(プロフ) - sunnyさん» コメントありがとうございます!ジンくん目線!凄くいいですね。整理が着いたら書いてみたいと思います!本当に嬉しいお言葉ありがとうございます。 (2021年10月15日 20時) (レス) id: 2712528a63 (このIDを非表示/違反報告)
sunny(プロフ) - すごいどストライクの作品で大好きです💜!この作品のジンくん目線?の内容もすごい気になります!これからも大変かと思いますがお話頑張ってください!! (2021年10月15日 18時) (レス) @page37 id: 5ee4f4580f (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - びぃんさん» コメントありがとうございます!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます。こんな最低の男にしてしまって申し訳ないですが気に入っていただけて良かったです! (2021年10月11日 18時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)
びぃん(プロフ) - いやめちゃくちゃ好きです何だこれは……すっごい昂りましたありがとうございます神様仏様K様…… (2021年10月11日 18時) (レス) @page37 id: 57661bab90 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - ほまさん» コメントありがとうございます!激アツ、凄く嬉しいです!風景を思い描いていただけて良かったです。これからも少しずつですが書き進めていこうと思いますのでまたご覧頂ければ幸いです。 (2021年10月11日 0時) (レス) id: d7c2a5623f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:K | 作成日時:2021年10月2日 19時

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