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『ただいま……』
そう呟いても、家の中から返事なんて返ってこなかった。
待ってると言ってはもらったが限界があることくらい知っていたし、ましてや真冬だ。
絶対に寝るだろうと思っていた。
なんて寂しさを隠すように適当に自分を納得させる理由をつけていく。
服を脱ぐと、終わったという思いが頭に駆け巡っていき、脱力感が押し寄せてきた。
今すぐにでも寝れる服なのだが、髪色が黒いままだとAに驚かれてしまう。
真冬のときは運よくAが寝惚けてたからよかったものの、Aは朝が強いから絶対に寝惚けてないだろう。
たしかお湯ですぐ流せるやつだし、風呂入るか。
渋々と風呂に入った。
風呂から上がると、さっきはついていなかったリビングの明かりがついていた。
リビングの扉を開けると、俺のことを見て嬉しそうに微笑む真冬とAと目があった。
「おかえり彼方」
「おかえりなさい」
『真冬……A……』
なんで、そう言いかけたときに勢いよく抱きつかれた。
後ろに少しよろめいただけでなんとか押さえられた自分を心の中で褒め称えた。
「遅かった……どこ行ったのかと思った……」
震えた声に、起きて俺がいなかったことに気付いて心配してくれていたことが分かった。
俺はAの頭を優しく撫でた。
『……ごめん』
俺がそう呟くように言えば、Aは俺を抱きしめる力を強めた。
「……彼方……よかった」
『……うん』
真冬の言葉は、無事でよかった、という意味なのだろう。
俺は真冬に向かって微笑むと、真冬も安心したのか微笑み返してくれた。
Aが俺から離れると、Aは何かを決意したような顔をして俺と真冬を見た。
「……真冬お兄ちゃん、彼方お兄ちゃん……約束してほしいことがあるの」
「約束？」
『なに？』
Aは胸の前で自分の手を握ると、大きな薄紫色の瞳に涙をためた。
「もう……夜遅くにどこにもいかないで。……私を置いていかないで……」
『……分かった。行かないよ』
「ごめんね、心配かけて」
震えた声で言われたらそう言うしかなかった。
真冬と俺はAと約束の証である指切りを交わした。
……まだ、悪夢は終わってないなんていうことは俺と真冬が一番分かっていることだ。
だってこのAの件にはあの人が関わっているのだから。
だから、これは仮初めの指切り。
でも、それでもいい。
Aが笑顔なら。
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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 清羅さん» ありがとうございます。そこまでこの作品に対して言っていただけて嬉しいです。更新頑張らさせていただきます。 (2020年8月5日 19時) (
レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
清羅(プロフ) - コメント失礼します。この話を読んでからブラッククリスマスを改めて聞くと今まで気づかなかったようなことに出会えたように思います。今まで読んだ作品の中で一番心を打たれた作品です。お忙しいとは思いますが更新、楽しみにしてます。 (2020年8月5日 19時) (レス) id: 5ca9b876de (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます。そんなことを思いながら読んでもらえて嬉しいです。続き、しっかりと最後まで書かせていただきます。 (2020年5月23日 16時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ブラッククリスマスを聴きながら、一つ目から読んでいたら本当に心がいたくなりました。大切に思っていたからこその行動に泣きたくなりました。続きを楽しみにしています。 (2020年5月23日 15時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/
作成日時：2020年5月23日 10時
