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無事に何事もなく家に帰ってくることができた。
Aは結局、本当に果たし状の主のところには行かず、なんなら果たし状を開けて中を見ることすらもしなかった。
いい判断だとは思うけれど、これは人を放置したということになるし、喜んでいいのかは全然分かんないけど……
Aは受験生だからと勉強するために自分の部屋に行ってしまい、今は真冬と俺の二人だけ。
あの事件以来、あんまり二人だけになったことがなかったから気まずくて沈黙が流れる。
その沈黙を破ったのは、真冬だった。
「ねぇ彼方」
Aといるときよりも暗い声で俺の名前を呼ぶ真冬は、どこか悲しそうな表情をしていた。
真冬の赤い瞳はいつもより、ずっと深紅色に染まっていて、すぐにどういう話をするのかということは察した。
「……僕、彼方とAと一緒にいていいの？」
前、真冬に同じことを聞かれたことがあった。
聞かれたのはあの事件の翌日の夜のときで、すごい不安そうにしていたのを今でも覚えている。
たしかそのときに言ったのは、一緒にいちゃいけない理由ってある？だったと思う。
……あの言葉じゃ、お前を、真冬を救えないの？
真冬の手は前のときみたいに震えていて、今すぐにでも泣きそうな目をしていた。
『……俺は真冬がAのために行動したっていうの知ってる。でもさ、Aはそれを知らないわけで、俺達はそれをまだ言わないって決めたわけでしょ？A、お前が最近おかしいって不安がってる。“普通”とか“いつも通り”を演じるなら、もっとちゃんと演じろよ。……今Aを安心させることできるの、真冬しかいないんだから』
真冬の目が大きく見開かれた瞬間、ボロッと大粒の涙が流れた。
俺は泣き続ける真冬の頭を撫でると、服の袖で真冬の涙を優しく拭った。
『お前は相川真冬。俺の相方兼弟でAの兄。大切な家族。これだけで、一緒にいる理由は充分だと思うんだけど。違う？』
「……ううん…………充分だよ……」
真冬は涙に濡れた顔で笑顔を作ると、俺に笑って見せた。
俺達の罪は深すぎて、重大過ぎて、Aに言うには酷すぎる真実。
だけど、いつかは例え受け入れられなくともAにも話すから。
大切な、家族だからこそ……
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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 清羅さん» ありがとうございます。そこまでこの作品に対して言っていただけて嬉しいです。更新頑張らさせていただきます。 (2020年8月5日 19時) (
レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
清羅(プロフ) - コメント失礼します。この話を読んでからブラッククリスマスを改めて聞くと今まで気づかなかったようなことに出会えたように思います。今まで読んだ作品の中で一番心を打たれた作品です。お忙しいとは思いますが更新、楽しみにしてます。 (2020年8月5日 19時) (レス) id: 5ca9b876de (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - 千々さん» ありがとうございます。そんなことを思いながら読んでもらえて嬉しいです。続き、しっかりと最後まで書かせていただきます。 (2020年5月23日 16時) (レス) id: 519239ae11 (このIDを非表示/違反報告)
千々(プロフ) - ブラッククリスマスを聴きながら、一つ目から読んでいたら本当に心がいたくなりました。大切に思っていたからこその行動に泣きたくなりました。続きを楽しみにしています。 (2020年5月23日 15時) (レス) id: a6aff5c4e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/
作成日時：2020年5月23日 10時
