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突き刺さるような視線を感じて、僕はゆっくりと白坂さんのことを見た。
白坂さんはどこか嬉しそうに口角を上げていて、月に照らされて光る金色の髪を揺らした。

「ねぇ相川君。……私に、興味無い?」

声なんて出ない。
だけれど、ここで否定しないと、もっと酷いことが起きるような気がして、声を絞り出す。

『……ないです。……赤の、他人なので』

声が震えたけれど、ちゃんと否定することができた。
そう、赤の他人だ。
よくても、客と店員、それだけの仲。
……だから、関わるのはやめてほしい。
なんて、ここまで言えたなら、きっと白坂さんみたいな人に好きになられずに済んだのかもしれない。
白坂さんの反応を見ようと、下がっていた顔をなんとか上げる。
……なぜか、白坂さんは目を細め、拒否されたにも関わらず、嬉しそうにニコニコとしていた。

「つれないなぁ。ふふ……じゃあ、さ。私達コイビトになってみる?」

この人は、何を言っているのだろう。
僕はちゃんと拒否したはずなのに、恋人になってみる、なんて、そんなの……
どこか、狂気を感じた。
話が噛み合わない、というよりかは、自分の都合のいいことしか聞いていないのかもしれない。
僕が唖然としているうちに、白坂さんの冷たい手が、僕の手を握りしめた。

「今日うち来てよ。誰もいないからさ」

白坂さんが頬を赤く染めて、上目遣いで僕のことを見てくる。
近くなったせいで、香水の匂いが濃くなったのか、頭がクラッとする。
まるで恋人のように、たりない、とでもいうかのような目が、僕のことを見てくる。
白坂さんの唇が柔らかく動く。
……どうしよう。
吐きそうだ。
白坂さんの手を解き、そっ離れるように後退する。

『……そういうの、無理です。……絶対に』

「どうして?もしかしてタイプじゃない?……相川君のタイプってなに?」

早口でそう聞いてきて、なんとか頭を働かせる。
……タイプ?
そんなの、可愛くて、優しくて、真っ白で純粋で……
僕を、彼方を、どんな事があっても受け止めて、愛してくれる……
……なんて、そんな子……

【真冬お兄ちゃん、彼方お兄ちゃん。……大好き】

『……貴女にそれを言っても、なれませんよ』

だって、そんな子は……
Aしかいないから。

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あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - ちょこさん» コメントありがとうございます!好きと言って頂けてとっても嬉しいです!更新はかなりゆっくりペースですが、気長に待っててくれると嬉しいです…! (2022年6月6日 16時) (レス) @page16 id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
ちょこ - この作品好きです!続き楽しみに待ってます! (2022年6月6日 13時) (レス) @page16 id: 5ad0b4ef6a (このIDを非表示/違反報告)
あづの ひみ(元朝日菜薔薇)(プロフ) - はおとさん» コメントありがとうございます!面白いと言っていただけて嬉しいです!更新頑張ります!! (2021年7月2日 19時) (レス) id: 4e3b964e65 (このIDを非表示/違反報告)
はおと(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!!更新待ってます!! (2021年7月2日 18時) (レス) id: 36f12069ba (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あづの ひみ(元朝日菜薔薇) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/AdAsnhmp/  
作成日時:2021年6月6日 9時

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