姿の知らない友達【wrwrd!短編集】 (ページ8)

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雷の音と優しい声/ut【ノラア】ページ8

「…怖い」

私は自分を抱きしめるように顔を布団の中に埋めた。
外ではゴウゴウと風がなり、窓を叩きつけるように雨が降り、雷が鳴っている。

怖い。
別に可愛い子ぶってる訳ではない。

高校生にもなって馬鹿らしいとは自分でも思うが、怖いものは怖いのだ。中学生までは両親にすがり付いて寝ていたが、私が高校生になってから親が共働きになってしまった為、どうすることもできない。

突然自室の扉が開く音がし、青色の光が見えた途端、ほぼ反射的に隣にあった熊のぬいぐるみを投げつけた。

「あぶな………僕は不審者じゃ……不審者やったわ…」

「………誰？」

「え、酷くない？」

部屋が薄暗く、顔が見えない不審者に対し、威圧を込めた声で反応すると、不審者は部屋の壁を探り始めた。電気のボタンを探しているにだろうか。

すぐさまスマホを取りだし、警察に電話をかけようとしたところで私の手が捕まれる。

ひぇっ…と声に出ない声が出た。

「俺やで？おばさんに許可貰ってるから。ってか逆にお願いされてんけど。通報はやめてくれへん？」

スマホがベットの上に落ち、そのスマホの明かりで不審者の顔が見える。
深海色の瞳に整った顔立ち。片目が隠れているが、もう片方の目は焦りと困惑と優しさで揺れていた。青色の光は鬱の目が月に反射して見えた物だろう。

「あ、鬱…」

怖かったのと安心したのとで自然と涙が頬を伝う。

鬱は私の隣の家で所謂幼馴染み。同級生だ。小さい頃からの友達で、兄妹、姉弟かはわからないが、家族のような存在だった。

「電話はしたよ？」

スマホを手に取ってみると、鬱からの電話があったことに気づく。

「音量0にしてた…」

「なにしてんねん」

そう言って鬱は笑った。

「おばさんからAの事頼まれたんよ。雷嫌いとか今まで知らんかったわ」

鬱は私の頬に流れた涙を手ですくいながら「誰でも怖いもんはあるしな～」と苦笑する。その優しげな顔と声に安心したのか眠たくなってくる。

「寝てええで。俺が隣におるからな」

鬱の声が遠く感じ、夢の中へと吸い込まれていった。

その時、鬱の顔が色んな感情を持った顔をしていたのに私は気づかなかった。

◆◇◆

夢主ちゃんは鬱に恋愛感情は持っておらず、どちかといえば兄弟愛みたいな物で、大先生はAの事が恋愛的に好きで、という話です。
自分に気を許してくれて嬉しいけど、許して欲しくない。と大先生は複雑な感情で、的な話にしたかったです

幼馴染みはいないし雷も怖くないノラアでした。

◆◇◆