二話 ページ2
外へ出ると、涼しい風が西から東へと吹き抜けていく。
空は真っ黒に染め上がっていて、無数の星が煌びやかに輝いている。
そんな、風景とは真逆に私の心は酷く沈んでいた。
太宰治と成り代わったという事は、私はポートマフィアの最年少幹部になってしまったという事だ。
今まで人を殺したりする、裏組織的な人とはかかわりも持ったことがなかったのに、明日から働いて、しかも幹部としての仕事をこなさなきゃいけないなんて。
「最悪すぎるよ......。」
「そんな浮かない顔して、貴方らしくない。」
声のする方へ視線を向けると黒髪丸メガネでポートマフィアの秘密情報員、坂口安吾が後ろに立っていた。
後ろに黒い車が止まっていることから、仕事終わり直行で来たのだろう。
「なんだ安吾か、ちょっと考え事をしていて。」
「あんな顔で、ですか?」
安吾は何かを探るような目つきでこちらを見てくる。
こいつ、少し感がいいな。バレなければいいが。
「あんな顔で、は失礼な。
えっと、そうだな。私はいつ死ねるのかなーと真剣に考えていたんだよ。」
原作の太宰治は、自さつ願望者。この答えなら、安吾も怪しまないだろう。
「無駄な心配をしました。」
安吾は、溜息をつきこめかみに指をあてる
案の定、怪しまれずに済んだのだが、これは呆れられたな。
「そうだ、今日は一体何の仕事をしてきたの?なんか面白い情報はあったかい?」
すると、安吾はまるでこの世には存在しないものを見たかのような反応をする。
「今日、何かありました?」
「え、今日かい?そうだねー特に何もなかったけど。急にどうしたの?」
「いつもなら聞かないようなことを聞いてきたので。何もなかったなら其れで良いんですけど。」
太宰治なら、聞いてそうだなと思っていたのに。自分の話を相手に聞いてもらう事しかしていなかったのか?
取り敢えず、話のネタを考えとかないと今日を乗り切れなさそうだな。変な雑学を交えながら頑張るか。
「あの」「そろそろ寒いし、中へ入ろう安吾!」
何か言いたげだったが、話を遮り、無理やり手首をつかみ、店内へと向かった。
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作者名:あねもるか | 作成日時:2024年1月21日 11時