一話 ページ1
カラン、と言うう音が頭の中で響き渡る。それと同時に、目に上から感じる温かい光によって自然と目が開いた。
ふと、手元を見ると、グラスの中に入った飲み物と丸い氷がある。
少し動かしてみると、カランとさっき聞いた音と同じ音が鳴る。
まるで、風鈴が鳴ったかのようなこの音は聞いていて心地いい音だ。
そう言えば、ここは何処だろう。
そんなことを思い、周りを見渡してみると隣に人が座っていた。
「どうした?太宰。」
「だ、ざい?何を云っているんだ?私は…」
最後まで言いかけたところで、私は勢いよく口を塞ぐ。
疑問が湧き、最後まで言ってしまったらどのような言葉が返されるか分かったからだ。
見たかぎりだが、私と彼は知り合い程度の仲だろう。となると、勿論間違った名前で呼ぶことは無い、と思う。
いや、万が一知り合いじゃなかったとしても、確信がないのに名前を呼ぶなんて不自然だ。
これで、私何々です。と、名前を出したところで不審がられるだけだろう。
それに、隣にいる人がだれか予想ができる。
赤茶色の短髪の髪、私が知っているアニメ【文豪ストレイドッグス】に出てくる織田作之助と言う人物にそっくりなのだ。
そしたら、此処は良く太宰が通っていたバー、ルパンに違いない。
そして、私が太宰に成り代わってしまった。という事だろう。
それにしては、自分の髪がやけに長いような気がするが、この世界の太宰は女なのだろうか。
分からないことの方が多いが、何が起こったかが少し分かってきた。
「太宰?」
「織田作、ちょっとぼーっとしていてね。先ほどまでしていた行動を覚えていんだよ。何をやっていたか教えてくれないかい?」
太宰の口調を少し真似しながら聞くと、織田作はこちらをじっと見てきた。
流石に怪しまれただろうか。
唐突に友達から、ここは何処?私は誰?みたいなことを言われて怪しまない人はそれほど居ないだろうし。
「何時ものように此処で飲んでいただけだ。」
返ってくると思っていなかった返事に目を見開く。
「ありがとう織田作。私は外の風でもあたってこようかな」
席を立ってドアのある方へと歩く。が、足を止め店内を見渡す。
「あ、居た。マスター少し外へ行ってくる。」
「俺と話した時に聞こえているんじゃないか?」
「念には念を。さ、織田作。」
不思議そうな顔をした織田作だったが、そのあと、「そうか。」と言って納得をしてくれたようだった。
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作者名:あねもるか | 作成日時:2024年1月21日 11時