国木田 独歩【小言】 ページ27
「全く、お前は何度言えば分かるのだ」
「すみません」
国木田さんは僕を見て溜息をつく。
僕はかの自死愛好家宜しく、ドラム缶の中に嵌っていた。
再度溜息をつきながらもドラム缶を横に倒してくれる国木田さん。
それに感謝の言葉を述べながら、缶の中から這い出た。
「自作の罠に嵌る奴があるか」
「ここに」
「……」
今度は頭を抱えられた。
「逃亡犯の追跡に夢中になって…」
「だから毎回周りを見ろと言っているだろうが」
確保出来たからいいものの、だの
俺がここに来なかったらお前は今頃上半身と下半身が泣き別れだ、だの。
いつも通りの説教をくどくどと続けられる。
「僕マルチタスクが苦手で」
「苦手で済むか莫迦者。任務の共有も忘れおって…見つけるのに時間が掛かっただろう」
そうしてまた溜息をつかれてしまった。
…別に迷惑をかけたくてしている訳では無いんだけど、なぁ。
あんまり溜息をつかれるので、いつものことながら気分が落ち込んでしまう。
「…とにかく、次からは前もって何処に何の仕事をしに行くか共有しろ」
「それが出来れば多少は多目に見る」と肩に手を置かれた。
……元気づけてくれているのだろうか。
優しい声色に顔を上げれば、国木田さんは顔を背けた。
「照れてます?」
「喧しい」
照れ隠しなのか、国木田さんは自分の手帳をパラパラと確認している。
そんな様子を見て、思わず笑ってしまった。
「手帳逆さまですよ」
「なッ__」
そう指摘すると、頬を染めてその場に手帳を落とす国木田さん。
彼の反応を見て微笑みながら、僕は手帳を拾い上げようとする。
…そういえば。
僕の任務の詳細を伝えていなかったのに、どうして国木田さんは僕がここにいると分かったのだろう。
まあ国木田さんの観察眼と推測力の成果かな、なんてぼんやり考えながら、手帳を拾い上げた。
はらりと手帳から地面の砂が落ちる。
…
……
開かれていたページを見て、思わず目を見開いた。
「…これ」
僕の今週の行動履歴と、割り振られた仕事のこと。
人に話していない、一人の時間のこと。
食事を共にした人のことから家を出た時間まで。
それらが手帳にびっしりと書かれていた。
「……くに、きださ」
これは、と口を開きかけたところで視界を手で塞がれる。
最後に見えた彼の顔。
_国木田さんは、僕を見て微笑んでいた。
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凛さんリクエストありがとうございました!
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胡桃バター(プロフ) - りんごあめさん» リクエストありがとうございます!執筆までしばらくお待ちください (11月10日 1時) (レス) id: 55a2e79d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 森さんとのお買い物デートが読みたいです! (11月3日 18時) (レス) id: bd46442a68 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - ありがとうございます!! (2023年4月4日 8時) (レス) id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃バター(プロフ) - マーガリンさん» リクエストありがとうございます!慣れないキャラではありますが、精一杯書かせていただきますので、しばらくお待ちください。 (2023年4月3日 22時) (レス) id: ed4c5148d7 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - 小栗さんのヤンデレってできますか? (2023年4月1日 8時) (レス) @page33 id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡桃バター | 作成日時:2016年6月19日 22時