検索窓
今日:28 hit、昨日:22 hit、合計:122,746 hit

芥川 龍之介【休日】 ページ25

今日は風が穏やかだ。
降り注ぐ日差しも心地良い。

今日が休みで良かった、と
大きく伸びをして、息をつく。

……その隙を、というか。
その瞬間に、風が僕の帽子を連れ去っていく。

慌てて取り返そうとするも一時遅く、僕の手をすり抜けて、少し先の道端に落ちてしまった。

「あちゃ」

小走りに近寄って確保しようとする__前に、誰かがそれを拾い上げた様だった。
僕が顔を上げるより先に、ずい、と帽子が目の前に突き出される。

「わ、ありがとうござい……ま……」

受け取ったと同時に顔を上げると、目の前には見慣れた黒ずくめの青年。
一瞬サングラスのせいで ん?と思ったけど、よく見れば芥川龍之介くん、その人だ。

「貴方の物ですか」

「あ、ああ。僕の帽子、拾ってくれてありがとう」

芥川くんと休日が被っていたのか。
それにしても、オフの日の彼は思った以上に活発と云うか。

「…そういう格好もするんだ」

「休日、ですから」

姿を見ていただけなのに、少しむず痒そうに視線を逸らす芥川くん。
可愛い所もあるもんだ。

「うん、悪くないね。似合ってるよ」

そう素直に褒めれば、芥川くんは俯いてしまう。

……機嫌を害したかな?
それとも単に照れてるだけかしら。

後者だと良いな、と思いつつ彼の顔を覗き込む。

「__っ、止めて、下さい」

「ぎゃっ」

……覗き込み失敗。

彼の片手で制されてしまった。
彼の瞬発力は休日でも発揮されるのか。

「ご、ごめんね。嫌だったかなって。その……服に口出されるの」

「……いえ」

そういう、訳では。

と、彼は自分の上着で口元を隠す。

照れ隠しなんて、妙にいじらしいじゃない。
なんて腑抜けたことを考える。

……そう云えば、帽子を拾って貰ったんだよね。

「__あ、ねえ。芥川くん」

ぱん、と手を叩いて彼に笑顔を向ける。

「僕の帽子を拾って貰ったお礼に、お茶を奢らせて欲しいな」

このお礼は仕事でと思ったけど、せっかく休日の今日会えたんだし。
それに彼はお茶が好きだったろうし……
と、妙案だった筈が。

「いえ、結構」

ズバッと切られた。

「なんでぇ」

「この程度は貸しには入らぬ故」

「後輩なら黙ってお礼は受け取っときなさいよ〜」

その様な押し問答が暫く続き、
芥川くんが「なら」と口を開いた。






「なら。貴方の次の休日を僕にくださらないか」

「1日、貴方を独占したい」




**********************

硝さんリクエストありがとうございました!

梶井 基次郎【兄として】→←中島 敦【昼食】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (232 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
353人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

胡桃バター(プロフ) - りんごあめさん» リクエストありがとうございます!執筆までしばらくお待ちください (11月10日 1時) (レス) id: 55a2e79d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 森さんとのお買い物デートが読みたいです! (11月3日 18時) (レス) id: bd46442a68 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - ありがとうございます!! (2023年4月4日 8時) (レス) id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃バター(プロフ) - マーガリンさん» リクエストありがとうございます!慣れないキャラではありますが、精一杯書かせていただきますので、しばらくお待ちください。 (2023年4月3日 22時) (レス) id: ed4c5148d7 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - 小栗さんのヤンデレってできますか? (2023年4月1日 8時) (レス) @page33 id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:胡桃バター | 作成日時:2016年6月19日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。