芥川 龍之介【休日】 ページ25
今日は風が穏やかだ。
降り注ぐ日差しも心地良い。
今日が休みで良かった、と
大きく伸びをして、息をつく。
……その隙を、というか。
その瞬間に、風が僕の帽子を連れ去っていく。
慌てて取り返そうとするも一時遅く、僕の手をすり抜けて、少し先の道端に落ちてしまった。
「あちゃ」
小走りに近寄って確保しようとする__前に、誰かがそれを拾い上げた様だった。
僕が顔を上げるより先に、ずい、と帽子が目の前に突き出される。
「わ、ありがとうござい……ま……」
受け取ったと同時に顔を上げると、目の前には見慣れた黒ずくめの青年。
一瞬サングラスのせいで ん?と思ったけど、よく見れば芥川龍之介くん、その人だ。
「貴方の物ですか」
「あ、ああ。僕の帽子、拾ってくれてありがとう」
芥川くんと休日が被っていたのか。
それにしても、オフの日の彼は思った以上に活発と云うか。
「…そういう格好もするんだ」
「休日、ですから」
姿を見ていただけなのに、少しむず痒そうに視線を逸らす芥川くん。
可愛い所もあるもんだ。
「うん、悪くないね。似合ってるよ」
そう素直に褒めれば、芥川くんは俯いてしまう。
……機嫌を害したかな?
それとも単に照れてるだけかしら。
後者だと良いな、と思いつつ彼の顔を覗き込む。
「__っ、止めて、下さい」
「ぎゃっ」
……覗き込み失敗。
彼の片手で制されてしまった。
彼の瞬発力は休日でも発揮されるのか。
「ご、ごめんね。嫌だったかなって。その……服に口出されるの」
「……いえ」
そういう、訳では。
と、彼は自分の上着で口元を隠す。
照れ隠しなんて、妙にいじらしいじゃない。
なんて腑抜けたことを考える。
……そう云えば、帽子を拾って貰ったんだよね。
「__あ、ねえ。芥川くん」
ぱん、と手を叩いて彼に笑顔を向ける。
「僕の帽子を拾って貰ったお礼に、お茶を奢らせて欲しいな」
このお礼は仕事でと思ったけど、せっかく休日の今日会えたんだし。
それに彼はお茶が好きだったろうし……
と、妙案だった筈が。
「いえ、結構」
ズバッと切られた。
「なんでぇ」
「この程度は貸しには入らぬ故」
「後輩なら黙ってお礼は受け取っときなさいよ〜」
その様な押し問答が暫く続き、
芥川くんが「なら」と口を開いた。
・
「なら。貴方の次の休日を僕にくださらないか」
「1日、貴方を独占したい」
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硝さんリクエストありがとうございました!
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胡桃バター(プロフ) - りんごあめさん» リクエストありがとうございます!執筆までしばらくお待ちください (11月10日 1時) (レス) id: 55a2e79d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 森さんとのお買い物デートが読みたいです! (11月3日 18時) (レス) id: bd46442a68 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - ありがとうございます!! (2023年4月4日 8時) (レス) id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃バター(プロフ) - マーガリンさん» リクエストありがとうございます!慣れないキャラではありますが、精一杯書かせていただきますので、しばらくお待ちください。 (2023年4月3日 22時) (レス) id: ed4c5148d7 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - 小栗さんのヤンデレってできますか? (2023年4月1日 8時) (レス) @page33 id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:胡桃バター | 作成日時:2016年6月19日 22時