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谷崎 シ閏一郎【2人きり】 ページ19

ぽつぽつと鳴る雨音。窓を雨が軽く叩く。
夜に雨だと寝苦しいこの時期は涼しくて良い。
涼しいと恋人とくっついていれるから。

「う……Aく〜ん…」

「んー…潤一郎動かないで」

枕にしていた潤一郎が苦しそうな声を上げる。

「そろそろ退いてくンないかな…背中つりそう」

「あ……そ、そんなに重かった?ごめんね」

思っていたよりダメージを受けていたみたいだったから慌てて体を起こして移動する。
枕数個を彼の代わりに壁と背中の間に挟む。

「いや重いというか当たり所が悪くて…」

「でもそこに頭置くのが1番良いんだよね」

「ボクの身を少しは案じてくれない!?」

半泣きで僕にしがみつく潤一郎。
こういうとこがちょっと可愛い。

……さっきお風呂に入ったばっかりだから潤一郎のシャンプーの香り。
自分も使ったものは一緒の筈なのに、潤一郎のほうが良い匂いだと感じるのはなぜだろう。

「ん、潤一郎ってばいい匂い」

「そ、そう?Aくんにそう褒められると嬉しいな」

照れたように頭を搔く潤一郎。
こうしてると年相応で可愛いのにな。
ナオミちゃんが関わるとすごく大人っぽくなるから。

「……ナオミちゃんに悪いことしちゃったな」

「ナオミはナオミで楽しんでると思うけどね」

「ああ、探偵社の女子会だもんねぇ」

女子会、なんて言うと可愛げがあるけど、探偵社は男より女子のほうが恐ろしい。

「でもこんな可愛い潤一郎を独り占めしちゃって悪いなァ」

「……可愛い?」

「可愛いよ」

そう言うとあからさまにガックリと俯く潤一郎。
可愛いものは可愛いんだから仕方ないと思うけど。
それに僕の方が恐らく歳上だし。

「潤一郎は可愛いね」

彼にちょっと意地悪したくて頬を人差し指でぷにぷにと指す。

そのまま可愛い可愛いと愛でていたら、突然手首を掴まれて。


「え」


そのまま押し倒されて布団に寝転がる。


枕のお陰で頭は痛くなかったけど、視界がいきなり回ってちょっと思考が追いつかなかった。





















「これでも可愛い?」

さっきとは打って変わった真剣な顔で、潤一郎は僕を見下ろす。

嗚呼もうしてやられた。
僕は咄嗟に首を横に振る。

「……可愛くない…」

「…ふふ、油断は駄目だよ。何事もね」







”だって恋人の部屋に2人っきりなンだもの”

国木田 & 谷崎【荷物】→←中原 中也【お風呂】



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胡桃バター(プロフ) - りんごあめさん» リクエストありがとうございます!執筆までしばらくお待ちください (11月10日 1時) (レス) id: 55a2e79d32 (このIDを非表示/違反報告)
りんごあめ - 森さんとのお買い物デートが読みたいです! (11月3日 18時) (レス) id: bd46442a68 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - ありがとうございます!! (2023年4月4日 8時) (レス) id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)
胡桃バター(プロフ) - マーガリンさん» リクエストありがとうございます!慣れないキャラではありますが、精一杯書かせていただきますので、しばらくお待ちください。 (2023年4月3日 22時) (レス) id: ed4c5148d7 (このIDを非表示/違反報告)
マーガリン - 小栗さんのヤンデレってできますか? (2023年4月1日 8時) (レス) @page33 id: 7ba1c946a0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:胡桃バター | 作成日時:2016年6月19日 22時

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