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貴方はそうやって言うけれど ページ3





ある昼下がり。
Aは窓から差す暖かな日差しを受け、睡魔に誘われていた。

うとうと、こっくりこっくり。
太宰の居ない執務室は(とても)静かなもので、あと少しすれば寝てしまうだろう。

そこに、ガチャりと音がする。

微睡む意識の中振り向くと、外套を何処かにやった太宰の姿が目に映った。


「あーあ、また今日もタヒね無かったよ」


そう言って眠たそうなAを後ろから抱きしめ、床に座りつつ膝に乗せる。
服が幾らか湿っぽい、今日は入水だろうか。


『きょうも……じさつ…?』

「そうさ、Aちゃんを愛でる以外の私の娯楽はそれ以外に無いからねぇ…」

『どうして…?』

「何故だと思う?」


太宰の瞳を覗くけれど、そこには底の知れない闇が広がっているような気がして 直ぐに目を逸らしてしまう。

彼の発言にはいつも 奥根底に何か隠されている気がする。だが、その"何か"に辿り着く事はいつも出来ない。

(そもそも)、発言自体 嘘かもしれないのだから。


「早くタヒにたいよぉー…」

『私は……さびしくなるから、やだな…』


またうとうとし始めていたAが、ポツリと零した。
瞳を寂しげに、不安げに揺らし 太宰の方を向く。


『だざいがいないのは……さみしい…』


そう言い、太宰のスーツを少し握り 意識を手放した。まるで、勝手に離れられないように……小さな手で掴んでいる。

少し経てば、落ち着いた静かな寝息が聞こえてくる。

優しく起こさぬ様に抱きしめつつも、太宰の顔は困ったように……けれど、何処か嬉しげに囁かな笑顔を浮かべ…


「そんな風に言われてしまっては……置いて逝けないじゃあないか……。全く、どうした事かなぁ…」


その言葉に返答が投げかけられることはなく、静かに午後の執務室に融けていった。

悪くは無い、こんな日も→←紅茶と気遣い



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紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» 太宰治様ですね(*^□^*) 了解です(*´∀`)♪ (2021年8月24日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
まふ(元月瀬)(プロフ) - 追記しましたがお相手だざさまですー (2021年8月22日 22時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» じゃあ、中也様が孤児の幼女主を拾い、その日以来すっかりシスコンで、デレメロのをお願いします(v^ー°) マフィア全員の癒しです、勿論探偵社もです(〃ω〃) (2021年1月23日 11時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
まふ(元月瀬)(プロフ) - 紅月ミレーさん» ありがとうございました♪紅月ミレーさんには初期からお世話になりました、ありがとうございます。作品はまだ決めた無いので絶対に作れるとは言いきれませんが、もしご案があるならお聞きしたいです♪ (2021年1月23日 10時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» 黒太宰治様と夢主ちゃんの、二人きりの結婚式滅茶苦茶良かったです(〃ω〃) 最終回で寂しいですが、此れからも頑張って下さいね(o^−^o) あ、リク作品は有りですか(´・ω・`)? (2021年1月21日 21時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:まふ | 作成日時:2020年6月30日 20時

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