想いを包みし桃の衣 ページ6
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ポートマフィア五大幹部、尾崎紅葉の執務室。
柔らかな甘い香の香りが漂う部屋に、Aは来ていた。
「着物を着せて欲しい?」
『うん…おねがいします…』
「良いが…急に如何したのじゃ?」
『だざいがね…前、きものをきてる人はすてきって言ってた…』
「成程のぅ」
それならば、と 奥へと連れて行き 鏡の前にAを立たせた後に 数着の子供用着物を持ってきた。
暖かい陽だまりの様な色や、新緑の様な柔らかい色、澄み切った空のような色に、高貴な椿の様な色。
その中でもAの目を一番引いたのは、春一番に咲いた梅のような 鮮やかな
白の花弁が散らされ、鞠の模様が
『あねさま!これ!これっ!!』
普段では見せないような輝きを瞳に宿し、明るい表情で尾崎の着物の裾を引く。
その様子を微笑ましげに見つめながら、宥める様に頭を撫でた。
「落ち着きなんし……ふむ、これが良いのじゃな?」
『うんっ…!』
「ほほ……Aに似合う、可愛らしい着物じゃ。これはわっちから主への
『いいの…?』
「うむ、わっちが持っていても持て余してしまうでのぅ……受け取ってくれるかえ?」
『!!ありがとう…!』
ふわふわと周りに花を咲かせ、嬉しそうに頷くAを 愛おしげに優しく見つめ乍も、闇に染った自身の手で触れて良いものか…
顔や態度には出さずとも、秘かに心の奥底で感じていた。
〜
そして小一時間もした頃、首領執務室にAは戻ってきた。
小さな身に可愛らしい朱鷺色の着物を纏い、白い花の髪飾りを揺らして。
『だざい…?』
そっ、と覗き込む。
他の人が居ないかを確認し、ゆっくりと側へ。
「おや……見違えた、何処のお嬢さんが尋ねてきたのかと思えば より一層可愛くなったAちゃんだったのだね」
『うん……あのね、だざいが きものをきてる人がすてきって言ってたから……あねさまにきせてもらったの……どう…?』
「ふふ、とっても似合っているよ。桃の妖精みたいだ」
太宰はそう言うと 春の陽だまりのような柔らかい笑みを浮かべ、抱き上げ 自身の膝に乗せる。
「今日のお茶はその可愛らしい装いに合わせて、和菓子にしようか」
『うん…たのしみ』
少し間を置き、2人でくすくすと笑い合う。
そしてまた、髪飾りがシャランと音を立てて揺れるのであった。
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紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» 太宰治様ですね(*^□^*) 了解です(*´∀`)♪ (2021年8月24日 18時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
まふ(元月瀬)(プロフ) - 追記しましたがお相手だざさまですー (2021年8月22日 22時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» じゃあ、中也様が孤児の幼女主を拾い、その日以来すっかりシスコンで、デレメロのをお願いします(v^ー°) マフィア全員の癒しです、勿論探偵社もです(〃ω〃) (2021年1月23日 11時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
まふ(元月瀬)(プロフ) - 紅月ミレーさん» ありがとうございました♪紅月ミレーさんには初期からお世話になりました、ありがとうございます。作品はまだ決めた無いので絶対に作れるとは言いきれませんが、もしご案があるならお聞きしたいです♪ (2021年1月23日 10時) (レス) id: 9a5360aa7e (このIDを非表示/違反報告)
紅月ミレー - まふ(元月瀬)さん» 黒太宰治様と夢主ちゃんの、二人きりの結婚式滅茶苦茶良かったです(〃ω〃) 最終回で寂しいですが、此れからも頑張って下さいね(o^−^o) あ、リク作品は有りですか(´・ω・`)? (2021年1月21日 21時) (携帯から) (レス) id: a496965e6a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:まふ | 作成日時:2020年6月30日 20時