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35*宮沢賢治 ページ36

そろりと布団から顔を出す。


するとそこには、鮮やかな金髪に麦わら帽子を被った愛らしい笑顔を浮かべる男の子が立っていた。



『え、っと…』


「目が覚めたなら良かったです、

 気分はどうですか?」


『え、あの、多分大丈夫です』


「そうですか! それは安心しました!」



ニコニコと笑いながら両手を合わせる男の子に、ついこちらも口元が緩む。


と言ってもさっきから断続的に聞こえてくる悲鳴のせいで何となく頬がひきつるんだけどね。



カーテンが開いたせいで、その叫び声が繰り出される扉を凝視してしまった。



「どうかしましたか?

 あ、やっぱり気分が悪いとか、」


『…いやそうじゃないんですけど、その、』



果たしてこれは聞くべきなのか?


チラチラと男の子と扉を交互に見れば、男の子は首を傾げた後ポンッと手を打った。



「そうでした、自己紹介がまだでしたよね?

 僕の名前は宮沢賢治です!」


『へ、あ、どうも。

 流野Aです、宮沢さん』


「敬語はいらないですよ?

 多分僕の方が年下ですから、後名前で呼んでください!」


『あ、うん…じゃあ賢治、くん』


「はい! よろしくお願いしますAさん!」



そう言いながら私の両手を掴んで握手する賢治君。


満面の笑みに浮かんだそばかすが何処か幼い印象を与えた。

けど地味に力が強くてちょっと痛いかも。



そんな和やかな空気の中、それを引き裂く悲鳴がまた響き渡った。


『…あの賢治君、さっきから聞こえるこれって、』


「これですか?

 今丁度谷崎さんが与謝野先生の治療を受けている所なんです」


『え、治療!? 人体実験ではなく!?』


「はい! 治療です!」



物凄く効くんですよ、とあっけらかんと言い放つ賢治君に変な汗が滲んだ。


これ本当に治療してる音なの?

そして今谷崎さんって言った!?




頭の中が混乱し目が回りそうになった瞬間、

気持ちよさげな声と一緒に音が止み、悲鳴の元凶となっていた扉がギィイッと開いたのだ。



反射的にそっち側に顔を向ければ、コツリコツリとヒールの音が近づいてくる。


ほの暗い部屋の向こうからその姿が見えた途端、ヒッと小さな悲鳴が飛び出た。



「あ、与謝野先生! 治療お疲れ様です!」


「あぁ賢治かい」



だってその人の顔や体に、所々赤い飛沫が飛んでいたからだ…




『(おうち、帰りたい…)』



そう思っていたらパチリと女の人と目が合った。



.

36*与謝野晶子→←34*叫び声



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ゴーゴリンゴ - 続き気になりすぎて夜しか寝れません!!!更新待ってます! (2022年8月14日 14時) (レス) @page38 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
ノイズ - モブの設定どこ行きましたwww面白いです。更新頑張ってください (2019年10月22日 13時) (レス) id: 4f45d6607d (このIDを非表示/違反報告)
すーがく - 面白いです!!更新、楽しみにしてます!ゆっくりでいいですから!澪菜さんの作品読めるだけで幸せなので! (2018年1月10日 12時) (レス) id: 9fb1372198 (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - かさかさスライムさん» 返信遅れてすいません!もう本当にありがとうございます!自分のペースでなんとかやってみます! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - 八雲さん» 返信が遅くなってしまいごめんなさい!ありがとうです、全然更新できなくてへこんでましたが元気出ました! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:澪菜 | 作成日時:2017年1月4日 23時

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