33*賞金首 ページ34
白い虎が唸り声を上げながら、
芥川と樋口に襲い掛かる。
それは数日前までこの横浜の地を騒がせていた人食い虎であり、
異能力により敦が変化した姿でもあった。
その虎は一度羅生門により真っ二つに切り裂かれたが、それは僅かに意識を残した谷崎の細雪によって作られた虚像。
本物は芥川の背後から現れ、芥川もまた羅生門で迎え撃とうとした。
その時、
「はーいそこまで」
「なッ、」
この場に似つかわしくない気の抜けた声により止められた。
「貴方は探偵社の、何故ここに!」
「美人さんの行動は気になっちゃう質でね、こっそり聞かせて貰った」
「まさかッ!」
その言葉に樋口はハッとしジャケットのポケットを漁る。
中から出て来たのは見覚えの無い盗聴機。
樋口の計画は最初から見抜かれていたのだ。
「ほらほら起きなさい敦君、三人もおぶって帰るの嫌だよ私」
「生きて帰すと思っているのか!」
ガチャリと拳銃を構える樋口。
しかしそれは口に含んだ笑い声と共に止められた。
「太宰さん今回は退きましょう。
しかし人虎の身柄は僕らポートマフィアが頂く」
「何で?」
「簡単なこと、その人虎には闇市で賞金首がかかっている」
賞金の額は七十億、その単位に太宰は目をパチクリさせふっと笑みを溢した。
「それは随分と景気の良い話だね」
「探偵社にはいずれまた伺います。
ポートマフィアは必ずその七十億を奪う」
「では武装探偵社と戦争かい?
やってみ給えよ…やれるものなら」
静かな風が路地裏を流れた。
その流れに身を委ねる砂色のコートと焦げ茶混じりの黒い髪、
その間から覗く太宰の不適な表情に樋口はその綺麗な顔を思いきり歪ませた。
「零細企業ごときが、我々はこの町の暗部そのもの!
この町の政治、経済の悉くに根を張る!
たかだか十数人の探偵社ごとき、三日と待たずに事務所ごと灰と消える!
我々に逆らって生き残ったものなどいないのだぞ!!」
それは事実だ。
このヨコハマという町で生きて行く為には、決して闇に足を踏み入れないこと。
その闇の怒りに触れ足を踏み入れたら最後、
死体も残らずその者は次の朝日を拝むこと無くこの世を去ることになるだろう。
だが樋口のその言葉に太宰は面倒そうに返事を返した。
「知ってるよそのくらい、」
「然り。
他の誰より貴方はそれを承知している。
元ポートマフィアの太宰さん」
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ゴーゴリンゴ - 続き気になりすぎて夜しか寝れません!!!更新待ってます! (2022年8月14日 14時) (レス) @page38 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
ノイズ - モブの設定どこ行きましたwww面白いです。更新頑張ってください (2019年10月22日 13時) (レス) id: 4f45d6607d (このIDを非表示/違反報告)
すーがく - 面白いです!!更新、楽しみにしてます!ゆっくりでいいですから!澪菜さんの作品読めるだけで幸せなので! (2018年1月10日 12時) (レス) id: 9fb1372198 (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - かさかさスライムさん» 返信遅れてすいません!もう本当にありがとうございます!自分のペースでなんとかやってみます! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - 八雲さん» 返信が遅くなってしまいごめんなさい!ありがとうです、全然更新できなくてへこんでましたが元気出ました! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪菜 | 作成日時:2017年1月4日 23時