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30*業 ページ31

目の前で起こる光景に敦はただ恐怖に震えるしかなかった。



樋口の銃撃により血だらけで倒れるナオミ、


芥川の羅生門により背中を貫かれた谷崎、



そして目の前にいる最悪とも呼ぶべき人物がいることに。



「人虎は生け捕りとの命の筈、片端から撃ち殺してどうする。

 役立たずめ」


「…すみません」



乾いた音と共に芥川に頬を叩かれた樋口が力無く答える。



「人虎は生け捕り…?

 あんた達一体、」


「元より僕らの目的は貴様一人なのだ、人虎。

 そこに転がるお仲間はいわば貴様の巻き添え」



芥川のその言葉にドクンと敦の心臓が嫌な音をたてた。



「ッ僕のせいで皆が…!」


「然り、それが貴様の業だ人虎。

 貴様は、生きているだけで周囲の人間を損なうのだ」


「ッ!!」




その瞬間、またあの光景が敦の中に蘇る。


孤児院を出て幾日もたつのに、

未だに敦の頭の中を支配する罵倒の声と汚物を見るような鋭い目をした大人達ーー、


その者達は皆口を揃えて言うのだ、





  ーー出て行け穀潰しッ!





存在する意味など無いのだと、







  ーー何処ぞで野垂れ死んだ方が世間様の為よッ!








生きる価値など無いのだと、








  ーーいや、天下の何処にも貴様の居場所など有りはせぬッ!!







自分が居るべき場所など無いのだと…




「それが、僕の、業…」



「異能力、"羅生門"」


「ッ!?」



芥川の声と共に、赤黒い光と共に鋭い牙を持った獣が現れた。

そしてそれは凄まじいスピードで敦に襲い掛かる。



舞い上がる砂埃が晴れた瞬間、己の僅か数センチ隣の地面が熱を帯び抉り取られている光景に敦は目を見開いた。



「勿論今のはわざと外した。

 だが僕の羅生門は悪食、あらゆるモノを喰らう。


 生け捕りが目的だが抵抗するならば次はお前の足を奪う」


「な、何故僕が…ッ!」



一瞬のことに体が震える敦は目を見開いた。

芥川に目を向けた瞬間、羅生門に捕らえられている少女が視界に映ったのだ。


そしてその少女は間違いなくあの川原で出会った少女、名は…



「Aちゃんッ!!」


「…ッ、!?」


「…ほう、貴様はこの小娘を知っているのか。

 ならば好都合、共に僕らと来て貰う」


「何だとッ!?」




  ドクンッ!!




芥川のその言葉に敦は先程と同じく、


けれどもそれ以上に心臓の音が悲鳴を上げ、跳ね上がったのを感じた。



.

31*断末魔→←29*芥川龍之介



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ゴーゴリンゴ - 続き気になりすぎて夜しか寝れません!!!更新待ってます! (2022年8月14日 14時) (レス) @page38 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
ノイズ - モブの設定どこ行きましたwww面白いです。更新頑張ってください (2019年10月22日 13時) (レス) id: 4f45d6607d (このIDを非表示/違反報告)
すーがく - 面白いです!!更新、楽しみにしてます!ゆっくりでいいですから!澪菜さんの作品読めるだけで幸せなので! (2018年1月10日 12時) (レス) id: 9fb1372198 (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - かさかさスライムさん» 返信遅れてすいません!もう本当にありがとうございます!自分のペースでなんとかやってみます! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - 八雲さん» 返信が遅くなってしまいごめんなさい!ありがとうです、全然更新できなくてへこんでましたが元気出ました! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:澪菜 | 作成日時:2017年1月4日 23時

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