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29*芥川龍之介 ページ30

ドサリと自分の腕に倒れたAに男は顔を歪める。


だがその思考は別の任務についていた部下、樋口の連絡の音によりすぐにかき消された。



〔――先輩? 予定通り捕らえました。これより処分します〕


「…重畳、五分で向かう」



そう答えパチンと携帯を閉じれば、羅生門で腹を殴り気絶したAの顔を眺めた。


本来ならばここで人目のつかぬ内に羅生門の鋭い牙で始末する、が、



「…チッ、異能の制御が効かぬ」



何故か先程から羅生門の形成が上手く行かない。


早く鋭い牙で、棘で、殺気で、眠るAを殺せと命じている筈なのに目の前の羅生門は動こうとはしなかった。


更に舌を打った男は、腕に抱えていたAの腹を羅生門で抱え直し、

そのまま屋根伝いに今回の獲物である人虎こと中島敦達と探偵者がいる場所へと向かった。







――――――
――



雪が降っていた。


淡くほの白く光る季節外れの雪が、銃撃の音がけたましく響く路地裏に降っていたのだ。

そしてその雪は樋口が撃ち抜いた筈の谷崎の揺らぐ姿を隠した。



「何ッ!?」


「ボクの異能力"細雪"は、雪の降る空間そのものをスクリーンに変える。

 ボクの姿の上に背後の風景を上書きした、もうお前にボクの姿は見えない。


 よくもナオミを傷つけたね…殺してやるッ!」


「ッ、姿は見えずとも弾は当たる!」



樋口の攻撃により谷崎を庇うように銃撃を受けたナオミは血だらけで倒れている。


そしてその奥には恐怖に震える敦の姿もあった。

しかし怒りに狂う谷崎の叫び声は響くも樋口にその姿は見えず、四方八方銃を撃ち続けた。



「大外れ」


「ッぐ、あッ!」



静かな声と共に樋口の首は背後から姿を現した谷崎の手により掴まれ、絞められた。


殺気を含むそれは本気で樋口を殺そうとしている。



「死んでしまえッ!」


「――ッ、」



もうすぐで意識が飛びのきそうになった…その時だった。



  ドスッ!!



背後から音も無く現れた黒い獣に谷崎は体を貫かれた。



「死を惧れよ、殺しを惧れよ。

 死を望む者、等しく死に、望まるるが故に――ゴホ、」


「ッ!?」



咳き込みながらそう呟きこちらに近づくその人物に敦は探偵社で国木田に言われたことを思い出した。



  ――こいつには遭うな、遭ったら逃げろ



そう、それは…



「お初にお目にかかる、僕は芥川。

 そこな小娘と同じく、ポートマフィアの狗」



ゴホッとまた咳き込む音が一つ零れた。

.

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ゴーゴリンゴ - 続き気になりすぎて夜しか寝れません!!!更新待ってます! (2022年8月14日 14時) (レス) @page38 id: 5a52c0f3ec (このIDを非表示/違反報告)
ノイズ - モブの設定どこ行きましたwww面白いです。更新頑張ってください (2019年10月22日 13時) (レス) id: 4f45d6607d (このIDを非表示/違反報告)
すーがく - 面白いです!!更新、楽しみにしてます!ゆっくりでいいですから!澪菜さんの作品読めるだけで幸せなので! (2018年1月10日 12時) (レス) id: 9fb1372198 (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - かさかさスライムさん» 返信遅れてすいません!もう本当にありがとうございます!自分のペースでなんとかやってみます! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)
澪菜(プロフ) - 八雲さん» 返信が遅くなってしまいごめんなさい!ありがとうです、全然更新できなくてへこんでましたが元気出ました! (2017年7月31日 7時) (レス) id: 9b7e5b62dc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:澪菜 | 作成日時:2017年1月4日 23時

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