黒い箱/ページ1/OK牧場の春 ページ4
俺の故郷は貧しい村で、そこで生まれた健康な若い男はみんな、家計を支えるため農閑期には出稼ぎに行っている。
それは俺とて例外ではない。
長い長いバスの旅を終えて、俺は生まれて初めて、所謂「都会」に足を踏み入れた。
赤煉瓦と石畳の街。
喫茶店から漂ってくるコーヒーの香り。
溢れかえる人、人、人。
見慣れない光景に唖然としていると、後ろから「邪魔」とスーツ姿の男に押しのけられた。
慌てて近くの壁に身を寄せて、家から持ってきた荷物入れから地図を取り出す。
仕事を探すならここに行け、と従兄弟につけて貰った印。
とりあえずはここに辿りつけさえすればいいのだ。
しかし、困ったことにごちゃごちゃと書き込まれたこの地図の見方がよくわからない。
というかそもそも、現在地はどこなんだ。
その場でしばらく頭を抱えてみたが、どうもこのままでも時間の無駄だと思い直し、俺は近くの人に道を聞く方に作戦を変更した。
顔を上げて、声をかけやすそうな人を探す。
だが目に入るのは、無表情のまま早足で歩く人ばかり。
少し近づいて声をかけても、目も合わせてくれない。
俺はすっかり萎縮してしまった。
やはり自分でどうにかするしかないか、と思ったその時、街灯の下で俯いて、誰かを待っている風な女性を見つけた。
これはチャンス、と思い、俺は小走りでその女性に近づいた。
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作者名:文芸部 x他4人 | 作成日時:2018年3月18日 0時