[ＲＫＲＮ］綾部と私の３６５日＊3

be with you *85 ページ36

一方のAは――――――









私は、失いかけた意識を保つことに必死だった。
駄目だ、ここで倒れるのだけは。


先生が前、座学の授業でおっしゃっていた、
「スパイクに落下の勢いで串刺しになって死ぬ者もいる」との話が今になって蘇ってくる。



そうこうしている内に
穴の外には一人、二人と深緋の忍者が集まっていた。




『…紫の忍…』


『まだ…するな、生かして…』


『そうか、…ことか』





会話は断片的にしか聞き取れなかったが、

不意に穴の表面に、ガラ、と掩蓋がかぶせられたので
穴の中は地上の光すらも届かなくなってしまった。



よく分からないけれど、逃げるなら今。




私はスパイクを引き抜こうと、穴の側面に手をかけて、足の裏に力を込める。

しかし、これがなかなか抜けず、襲ったのは相変わらずの激痛だけだった。





A「…、た」

横穴を掘ろうにも、スパイクを抜かないことには――――――。

そう頭では理解していても、痛みに対する恐怖が先立ってしまい体が動かせない。








綾部が居たら、穴なんてすぐに…。


こんな絶望的な状況では、そんな事すら思ってしまった。





そのまましばらくすると穴の中に
自分の鉄臭い血の臭いが広がり、息苦しさが襲う。



A「ゲ、ゲホゲホ…、つっ、」

むせ返るたびに再び襲う痛み。









…私、死ぬのかな。


私は、経験が無いながらも直感した。








そう思うと、全身から吸い取られるように力が抜けるようだった。

頭の中にぐるぐると渦巻く凄まじい音が、
だんだんと遠ざかっていくのが分かる。









自分の、ぜいぜいという荒い呼吸も、もう耳に届かない。







何も見えない。




何も聞こえない。




何も、感じない―――――









―――――――――――――――――――――――――――――――――


気がつけば私は、おぼろげな光の中にいた。

ちょうど雲の上に立つような光景が
目の前に果てなく広がる。


私は足元を見やるが、膝から下が煙がかっていて何も見えなかった。




A「…ここは？」



でも今の私にとって、ここが何処かということは何だかどうでも良く、

痛みから解放されたことが心地よかった。








けれど此処には、耳が痛いほどの静けさが広がっているだけ。

虫の音や、生き物の気配ひとつ感じられない。

be with you *86→←be with you *84

≪今日のラッキーアクション≫

自分の自慢話を誰かに語りまくれ！！３時間語れれば合格。

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す