[ＲＫＲＮ］綾部と私の３６５日＊3

be with you *81 ページ32

六年生を主とした先頭集団のうちの数人が、疾風迅雷の如く山道を駆け戻っていく。

旋風と化したそれは、枯葉を巻き上げ、朝露を纏う草花をさざ波のように鳴らした。







一刻も、早く。







――――――――――――――――――――



裏々々山の山腹を走っていた田村三木ヱ門は、前方に映る上級生らの影に、目を見開いた。

その隣を走っていた平滝夜叉丸も同様だ。





「おい滝夜叉丸、見ろ。先輩方がこちらに戻ってこられているぞ」


「そうだな、何かあったのだろうか」




彼らの周辺を走っている四年生、五年生の面々もこれに気が付いたようだ。

一同は一瞬、ざわめいた。








すると戻ってきた六年生数人のうち、立花仙蔵が、その三木ヱ門らの目の前で立ち止まった。


残りの五、六人はそのまま後方へ、忍術学園の方へ走り去っていく。
まるで彼らのことなど視界に入ってもいないような速さだった。





仙蔵のいつになく険しい目つきに、ほんの一瞬そのかんばせを見た三木ヱ門らでさえも、

何かただならぬことが起こったという事だけは肌で感じたようだった。



一瞬その場が、山中の静寂に溶け込む。









仙蔵は、語気鋭く言い放った。


「皆、大会は取り止めだ。我々が判断した。」


「立花先輩。一体何があったのですか」





不破雷蔵が緊張した様子で、けれどそれでいて静かに尋ねる。

仙蔵は固く目を閉じた後、一度、瞬きをする。

それを見ていた彼らにとっては、
その時間が何故かとてつもなく長いように感じられた。







「皆は一刻も早く帰路につけ。ここも危険だ」


「危険？それは…どういう意味ですか」


「ここで話をしている時間が無いのだ。…頼む」







仙蔵のその言葉に、その場にいた雷蔵らは、何か言いたげな表情を隠しきれない。



頼む―――――。


その言葉がどんな意味を持っているのか、なんてことは彼らに知る由もない。

けれど彼らは顔を見合わせ、不本意ながらも頷いた。


「分かりました」









仙蔵は、後輩たちが急いで引き返していく様子を見届けると、

自分が今まで走ってきた方面の道を、後顧の影を宿した目で見詰めた。






「文次郎や留三郎は、無事だろうか…」




呟くように言った後、気持ちを落ち着けるように
すう、と軽く一呼吸をおく。




そして仙蔵は再び、山中に残っている後輩を探しに
密生する木立に姿を消したのだった。

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≪今日のラッキーアクション≫

自分の自慢話を誰かに語りまくれ！！３時間語れれば合格。

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