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カルテ27 ページ29

「うぅ……ヒック………」



依頼者に手を出してしまった事を後悔し続けているシロは泣きながら街をさまよっていた。

先刻敦と一緒に居た田舎から自然と街に戻ってこれたものの、家に帰る道も事務所に戻る道も分からない。








食欲を覚えたシロは空腹だった。

持ち物は敦に渡された応急処置用の薬品と包帯のみ。
其れらは当然、シロの空腹を満たせる物では無い。
かと云ってお金も無く、見知らぬ人間────しかも大人に声をかけるなど以ての外だった。




人混みが怖くなったシロは路地裏に身を潜め壁に体を預ける。
只恐怖に怯えることしか出来ない。







「けほっ、ごほっ……………」
「(ビクッ」


突然路地裏から誰かが咳き込む声が聞こえた。
恐る恐る其方に近付くと、黒い外套(コート)に身を包んだ男が咳をしていた。
然し左手は右腕を掴んでいる。



「あ……あぁ………」
「ッ……………………誰だ、貴様は…」


男がシロへ近付く。
迫り来る殺気がシロを後ろへ退かせる。

「!血、血が、出て………」
「…ふん………」
「手当て、する。」
「え…?」


シロの言葉に男は驚く。そんな男を余所にシロは包帯を取り出した。
いつも太宰が巻いているのを見て、何となくやり方は分かっている。


男は黙って止血するシロを見ていた。








「…こ、之で…良い、かな………」
「……助かった。礼を云う。」
「ううん………」
「僕(やつがれ)の名は芥川。芥川龍之介だ。
貴様は何者だ?」
「ボク、は………………」


「シロ」という言葉が喉を突っ変えて出てこない。
如何して名乗るのを恐れているのか。


「……まぁ良い。
貴様は殺しの対象には入れないで…………」

最後まで言い切る前に、芥川はシロの或る部分に目がいった。
其れはシロの首周りに書かれた「1154793」。









「成程…貴様がかの研究所の生存者、
献体No.1154793、か…」
「え…?」


芥川の目の色が変わる。
シロが距離を取ろうとすると芥川はシロを路地裏へ引っ張る。




「貴様も人虎の様に生け捕りとの命がある。
僕と共に来てもらおうか。」
「ひっ…………」
「抗おうと無駄だ。
異能も無い凡人が僕に逆らう等…笑止。」


「異能────────────羅生門。」

芥川の黒い外套が揺らめく。
其れは徐々に牙へと変わる。


「抵抗しようと無駄だ。」



羅生門がシロを覆い暗黒の闇に染まる時。





「や…………メ、ロ…………!!!!!!!」
「!!?」

「がああああっ!!!!!!!」

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No.0 - 42話の敦くんの一人称が俺になっています。何か意図があって俺にしていたなら、すみません! (2019年1月27日 17時) (レス) id: f53043040e (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - おもしろいです。続編希望です (2017年7月20日 5時) (レス) id: 84b7979bce (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - こんな遅くですが読んでて凄く楽しかったです!続編希望です!! (2017年3月19日 19時) (レス) id: bacc85789b (このIDを非表示/違反報告)
赤月 - 完結おめでとうございます!続編希望です! (2016年10月31日 16時) (レス) id: 196406772c (このIDを非表示/違反報告)
赤喰 - 完結おめでとうございます!続編作って欲しいです!! (2016年9月26日 23時) (レス) id: 63178f43ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:十一葉(といちば)さん | 作成日時:2016年8月9日 17時

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