カルテ26 ページ28
ピンポーン
「………何ですか。」
敦が家のチャイムを鳴らすと、痩せ細り目の下に濃いクマを湛えた女性。
白髪混じりで目付きも鋭くシロは恐怖に襲われた。
「僕達、武装探偵社の者です。
被害者の方の犯人調査の件なのですが…」
「其の件については他の方にも云いました。
調査を打ち切って下さい。
今回の事は無かった事にしてください。」
「でッ、でも…!!!」
「遺族が云ってるンです。やめて下さい。」
女性の強い主張に敦が説得を続ける一方、シロの怒りが募って行く。
人を失ったのにお金を優先する事が、研究者にそっくりだったから。
・
・
『うわぁぁぁぁぁん!!!!!!!』
幼いシロは今よりもずっと泣き虫で弱虫だった。
1人に怯え、大人に怯え、暗闇に怯えていた。
そんなシロだから、知らない誰かであっても死んだり連れて行かれても悲しくなる。
・
・
沢山の献体の中で、シロは唯一知っていた。
研究者達に連れて行かれた子供達の末路を。
それ故涙は枯れる事は無かった。
連れて行かれた子の末路に悲しむ優しさの涙と、自分も連れて行かれるのではという恐怖の涙が。
だから人間の死より金を優先する輩が嫌いだった。
・
「止めてって言ってるでしょ!!
さっさと帰って!!」
パンッ
「シロッ!!!??」
「人間、死んだのに…
無かった事にッ、するなッ!!!」
シロは我慢が出来なくなって怒鳴った女性の頬をひっぱたいた。
敦は唖然とし、女性は頬を抑えキッとシロを睨む。
「ッ…依頼主に手を挙げるなんてッ…
之だから都会の人間は厭なのよッ!!!!!!!」
遂に扉をピシャリと閉められ、2人は玄関で立ち尽くす。
・
「…………シロ…」
「(ビクッ
ご、めんなさ、い…あっくん………」
「シロッ!!!!」
敦がシロに声をかけると、シロは耐えきれなくなって走り去った。
敦は乱歩と合流し事の一部始終を話す。
・
「…其れで…シロが依頼者を傷つけてしまって…」
「之は大変だ、敦君………」
乱歩が真剣な顔付きになり、敦は直感的に厭な予感がした。
・
・
「早くシロ君を連れ戻さないと…
依頼者が死ぬかもしれない──────」
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No.0 - 42話の敦くんの一人称が俺になっています。何か意図があって俺にしていたなら、すみません! (2019年1月27日 17時) (レス) id: f53043040e (このIDを非表示/違反報告)
カレン(プロフ) - おもしろいです。続編希望です (2017年7月20日 5時) (レス) id: 84b7979bce (このIDを非表示/違反報告)
ネロ - こんな遅くですが読んでて凄く楽しかったです!続編希望です!! (2017年3月19日 19時) (レス) id: bacc85789b (このIDを非表示/違反報告)
赤月 - 完結おめでとうございます!続編希望です! (2016年10月31日 16時) (レス) id: 196406772c (このIDを非表示/違反報告)
赤喰 - 完結おめでとうございます!続編作って欲しいです!! (2016年9月26日 23時) (レス) id: 63178f43ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:十一葉(といちば)さん | 作成日時:2016年8月9日 17時