【Fischer's】お隣さんが騒がしい！2【モトキ】 (ページ9)

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金曜日ページ9

今日は世の中は華の金曜日というやつで、わたしももちろん例外ではなかった。
乾いた摩擦音を立てるビニール袋の中身は缶チューハイ達、この1週間頑張った自分へのご褒美を片手に、足軽に帰路へ着く。

帰宅すれば早々に冷蔵庫に缶を入れ、部屋着に着替えて晩御飯の準備にかかる為に、冷蔵庫の中の食材チェックをしている時だった。

コンコン

どこからかノックの音が聞こえた。
動かしていた手を止めて耳をすます、しかし以降は特に物音はなく、もしかしたらシルク君達が何らかの撮影中ものをぶつけたのかもしれないと、耳をすますのも止めて再び手を動かした。

しばらく経って、晩御飯も食べ終わり、お風呂も済ませて机の上に待ちに待ったチューハイを準備した。
鼻歌交じりに座椅子に座り込み、撮り溜めていたドラマでも見ようとリモコンに手を伸ばす。

コンコン

「・・・また？」

隣が騒がしいことは日常茶飯事で、差して気にもとめていないのだが、独特なンダホくんの笑い声も、シルクくんの声も聞こえないというのに、物音だけが響いてくるのは初めての経験だった。

今までと違った撮影をしているのかもしれない。
好奇心でリビングから寝室へ移動して、シルクくんの家に繋がる壁にそっと耳を寄せてみる。

「・・・・。」

シルクくん達の声は待てども聞こえてこなかった。

そもそも1回目のノックがあってから1時間半は経過している、撮影とはそんなにぶっ通しでやるものなのか。
しかし悩んでいても仕方ない、悪戯であってもノックくらいなら、普段に比べれば特に支障もないし、まあいいかと結論付けていた時だった。

コンコン

またノック音がしたのだ。

反射的に音の鳴った方へ意識を向けて、思わず硬直する。
音が聞こえたのはわたしの家の寝室と、リビングを隔てるための壁からだった。これでもかと言わんばかりに目を見開き、凝視しても、いつもとなんら変わりのない壁があるだけで、どれだけ目を見開けどもそれ以上の情報が入ってくることはない。

自分しか住んでいない部屋の内壁から何故、どのようにして音が鳴ったというのか。
考えても分かる訳がなく、何かしら仕掛けがある事を願って、音が鳴ったと思われる壁へ近付く。

恐る恐る、そっと壁に手を伸ばす。