【Fischer's】お隣さんが騒がしい！2【モトキ】 (ページ17)

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私がしっかりつかまるのを確認してから、モトキくんは立ち上がる。
私を背負ったまま歩き出したモトキくんは無言のままで、いつも優しいと感じていただけに、慣れない空気に不安が湧き上がってくる。

確かに感じた違和感を抱えたままにするのは、正直嫌だった、シルクくん達がいる中ではきっと聞きにくくなる、2人きりの今がきっと聞きやすいだろう。

「ねぇ」

モ「んー？」

いつもと変わらない気の抜けた声だけど、それでも感じていた不安は拭えない。

「私、何かしたかな？」

モ「どうしたの、急に」

「なんだかいつもと違う気がして」

あと数歩でシルクくんの家に着くというところで、ぴたりとモトキくんの足が止まる。
随分と夜も深まって、夏独特の虫の鳴き声が聞こえてくる、歩みを止めたモトキくんが何か言うのを待っていれば、その鳴き声が嫌に鼓膜を刺激した。

モ「あーーーーーーー」

やっと口を開いたかと思えば意味のない母音だけで、それと同時にモトキくんがしゃがみこむものだから、少し驚いて咄嗟にしがみつく。

「モトキくん？」

とりあえず背中から降りようとすれば、私の足に絡んでいたモトキくんの腕に力がこもって、降りるに降りれない。

モ「ごめん、なんか、モヤっとした」

「もやっと？」

モ「Aちゃんに怒ってるわけじゃないのに、ごめん」

普段よりワントーン低い声からは、怒っているのか、落ち込んでいるのか分からず、表情も見えない。
いまいち意味を理解出来ず、返事に困っていると、モトキくんの腕の力が緩んだ。地に足をつけて立ち上がれば、モトキくんも合わせて立ち上がった。

こちらに向き直ったモトキくんはなんだか申し訳なさそうに眉尻を下げて、目線は合わせてくれなかった。

「わたし何かしちゃったのかな」

モ「ううん。Aちゃんは悪くないんだ」

先程と同じように私の所為ではないと言うだけで、核心を突く言葉は出てこない。

モ「とりあえず家に入ろう。シルクが待ってるから」

「・・・うん」

誤魔化されてしまった気もしたが、眉尻を下げたまま笑うモトキくんをそれ以上追求することは出来なかった。

胸の中の引っかかったものはそのままに、私とモトキくんはシルクくんの家へと上がり込んだ。