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祐基はAと月子を連れて家に戻った。
「これ以上、安全な場所はないだろ」と言う。
たしかに祐基の実家はとても落ち着ける場所だった。
お世話になるかわりに、あまり得意とはいえない料理をAと月子で作り、百合子や祐太、翔太と大勢で食卓を囲んですっかり和んでしまった。
食後、祐太たちが帰り、百合子がお風呂に入ってから、Aと祐基は月子から事情を聞きだした。
「盗聴器を仕掛けたのは野田社長だと思う。誰かに頼まれたのよ。私にお金を渡して、追い払うつもりだった……」
「なんなのよ、それ!」
Aは、さっき野田と月子がもめていた理由を聞いてカッとなったが、
「こっちで確認してみます。誰が社長にやらせたのか、それも調べます」
祐基は冷静だ。
月子は心当たりがないと言うが、「黙っていたけど ……」と恋人の存在を教えてくれた。
なんと立藤議員だという。
「立藤ってあの、永田町最後のイケメン独身議員って言われてる?」
Aが尋ねると、祐基が雑誌を引っ張り出してきて、十朱と共に写っている立藤の写真を指す。
「この人が彼氏?」
「彼氏っていうのかな」
月子はとぼけているのか、立藤とは曖昧な関係なのか、小首をかしげながら答える。
「立藤さん、あの記事のこと、なんて言ってるんですか?」
Aは尋ねた。
「連絡取れないの。立藤さんは十朱グループの人だから、この記事で十朱さんが追い込まれて、立藤さんも窮地に散っているの。私が十朱さんと食事に行かなければ、こんなことにならなかったのにって、今さら遅いけど、後悔してる」
「悪いのはスクープを仕組んだヤツじゃない?」
「ありがと。でも、もういいの。夢を見てたようなものだから……。あの月の土地の権利証、立藤さんがくれたの。普通の恋人らしいことはできなかったけど、彼が話す『日本の未来』を、『そんなこと本当にできるの』って思いながら聞くのが、好きだったの。いつのまにか、私も彼と同じ夢を見てた……でも、あきらめないとね」
「あきらめきれないから、依頼を続けてるんでしょ?あれこれ考えないで、好きなら好きでいいじゃん」
シンプルでストレートな性格のAはそう言った。
「社長を動かした黒幕っての調べ上げるから。立藤さんに、悪いのはこいつだって言ってやんなよ」
Aが力強く言うと、月子はようやく少しだけほほえんだ。
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作者名:MaRU | 作成日時:2018年4月26日 0時