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祐基は指定された品川埠頭橋の上に立つAを橋のふもとから見ていた。
近くに停めた車の中には瞳子が、そして助手席にはノートパソコンを広げた拓弥がいる。
手帳についていた紺色の万年筆は、祐基が用意したGPS機能つきの青い万年筆に交換してある。
「こんにちは」
背後から声をかけられ、Aがビクッとした。
そこに立っていたのは史織だった。
「手帳、ください」
Aは驚きながらも、手帳を差し出す。
「……本物ですね。挟まってた写真は?」
「そっちのメールには手帳としか書いてなかった。あれくらいくれてもいいでしょ。なんでこんなことやってんの?祐基のこと、好きになったのかと思ったのに」
史織は一瞬、表情を暗くしたが、我に返ってAを睨みつけると、路上で待機していたバイクの後ろにまたがり、去っていった。
「この辺のはずなんですけど……」
瞳子が運転する車はGPSが指し示していたポイント周辺にたどりついていた。
衛星の通信を遮断するような建物、あるいは地下に入ってしまったようで、大体の場所しか把握できなかった。
全員が辺りを見回すが、アジトらしい建物は見当たらない。
と、祐基が停泊している豪華な船に目をとめた。
「ビンゴ」
その船の傍らには、先ほど史織が乗っていったバイクが置いてあった。
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作者名:MaRU | 作成日時:2018年4月26日 0時