last mission 決着のとき ページ33
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海と連絡が取れずにいた祐基は、北品川署で由貴にかけあっていた。
「捜査できない?海、誘拐されたかもしれないんですよ?」
「小笠原さんが拉致された現場を誰も見たわけじゃないんですよね。まず、家出人捜索願を出して待ってもらうしかないんです」
由貴は努めて淡々と対応する。
「家出なわけないだろ!晃一を襲った連中に連れてかれたんだ」
「その件なんだけど……さっき、吉野さんを殴ったという犯人が自首してきました。単なるケンカだと言ってるようです」
嘘だ!
そう叫びたい気持ちでいっぱいだったが、祐基は言葉をのみこんだ。
由貴が取調室に入っていくと、自首してきた茶髪男がふてくされた様子で座っていた。
「むしゃくしゃしてたから、通りすがりに肩がぶつかった吉野を殴った。ただそれだけで、面識はない。その一点張りだ」
事情聴取の様子を後藤が説明してくれる。
「……どう思いますか?小笠原さんの誘拐を隠すための狂言じゃないでしょうか」
晃一が殴られたことと海が連れ去られたことはいっさい関係がなく、単なる傷害事件として片付けたいという目論見が見え隠れする。
後藤もそれはわかっていて「猿芝居だな……」とつぶやく。
しかし、
「この程度の傷害事件じゃ、これ以上調べることはない。上にも言われたんだろ、今の段階では捜査は許可できないって」
後藤が目を閉じ、首を横に振るのを見て、由貴はもどかしそうに唇をかんだ。
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作者名:MaRU | 作成日時:2018年4月26日 0時