mission9 最大の事件 ページ16
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「これが、父の遺品から出てきた手帳です」
喫茶店で向かい合った槇谷由香利が、すっと黒い手帳を差し出してきた。
槇谷元参事官は海の父親と大学の同級生だった。
海の父親が亡くなった一四年前、槇谷は娘にも告げずに姿を消し、つい先日、タイの病院でガンで亡くなったという。
「見覚えがあります」
表紙に刻印された『二〇〇四』という金文字を見て、海は心臓をぎゅっとつかまれたような苦しさを覚えた。
父親が毎年使っていた黒い手帳。
そして二〇〇四年は、父親が亡くなった年だ。
海は手帳を手に取って、パラパラとページをめくった。
「……父の字です。父の手帳に間違いないと思います」
「やっぱり。よかった、お返しできて」
由香利がにっこり笑っている。
父親が同じ年なので、由香利も海と同世代だろう。
「ずっと捜してたんです。父がいつも持っていたはずなのに、見つからないままなのが気になっていて」
「中にこれが挟まってたんです。だから、海さんのお父様の物じゃないかって」
由香利は一枚の写真を差し出した。
そこには若き日の海が写っている。
「……こんな写真、持ち歩いてたんだ」
「でも、同じ大学の友人だったとはいえ、警視庁に勤める父が、どうして弁護士のお父様の手帳を持ってたんでしょう?」
それは海にもわからない。
海は手帳と写真を見つめた。
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作者名:MaRU | 作成日時:2018年4月26日 0時