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「はい、バレット探偵社」
一番近くにいた祐基が出たが、相手は何も言わずに切れてしまった。
昨日も無言電話があった、と拓弥が言う。
「同じヤツかな」と晃一が思案するように言うと、
「今のは男だったよ」
祐基がさらっと答えた。
「男お？無言でなんでわかんの？」
Aがいぶかしげに聞く。
「何も聞こえなかったけど、なんとなく気配で。女からの電話だと、相手が何も言わなくてもすぐわかるじゃん」
当然のことのように話す祐基に、一同が困惑していると入り口の扉が開いた。
「ごめんくださーい、竹寿司でーす。特上一人前で、二三〇〇円になります」
特上が一人前、ということでみんな瞳子を見たが、瞳子は「自分じゃない」と否定する。
その後、次々と蕎麦屋、ピザ屋、インド料理屋、タイ料理屋の出前がやってくる。
「これ、嫌がらせ？」
Aが言うまでもなく、間違いなく嫌がらせだろう。
とりあえず代金を払い、みんなで手分けして、ひとまずさしたる被害があったわけでもないので様子を見ようということになった。
お腹がいっぱいになった祐基は先ほどの段ボールの中のファイルを取りだして、開いてみた。
中には履歴書が入っている。
「お、Aの履歴書！入ったときの？」
写真のAは、黒髪ストレートに眼鏡と、まるで生徒会長風だ。
でも出社時には、すでに今のド派手な飛鳥だったと晃一が言う。
一方、晃一の履歴書には、経歴の欄に『キャピタル探偵社、退社』と書いてる。
「ほかの探偵社にいたんだ。しかも大手」
「まあな。社長にヘッドハンティングされてん」
晃一は、勤めていた大手探偵社の粗暴なやり方に辟易しているところに、瞳子から声をかけてもらい、依頼に丁寧な瞳子の姿勢にひかれてバレット探偵社に移ってきたのだ。
ファイルをめくると、稜雅の履歴書があった。
写真はお坊ちゃん風だ。
思いのほかまともだと思ったのだが、何か違和感がある……。
祐基が気づいた。
「うわ！やばい。よく見て。この履歴書用紙、手書き」
よく見ると、罫線などすべて黒ペンの手書きだった。
変わったヤツだと呆れていると、
「そのへんにして、しまっとけ」
海にたしなめられた。
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作者名：MaRU | 作成日時：2018年4月17日 16時
