幕間 ページ10
「治療の時間です」
勢いよく障子が開け放たれる
そこにいたのは、かつて刀に戻ったはずである白山の姿
彼の姿にどよめきが走る
口々に彼らは何かを話す
だが、白山はそれを意に介せず片っ端から治癒を発動していく
「……む」
治癒が発動しなかった刀がいた
そんな刀に白山は拗ねた顔を向ける
「歌仙兼定」
「うん……ごめんね、僕は重傷寄りの中しょ……」
「お覚悟です」
「えっ」
その言葉と同時に、白山は本体を歌仙にぶっすりと刺した
「白……山……！？」
「これで治癒が発動できますね」
「薬研、でも、しなかったぞ！？」
歌仙が苦しそうに言葉を紡いでいる途中で、白山は治癒を発動していく
そんな白山は、悲しそうな表情で続ける
「わたくしが……剣、だからですか」
「都合が悪くなったらつつきにくい所使うの辞めようぜ」
「一期一振！？」
そこには白山の兄である、一期一振もいた
その為、長兄である一期一振に説明を求めようとしている刀が多かったのだ
「すいませんすいません！！白山！？何をしているのかな！？」
「一期一振を確認。……軽傷と判断。次に移ります」
「私も中傷なんだけどな白山！？少し止まろうか！」
兄の制止をフルシカトし、白山による治癒の行進は進んでいた
しかし
「……っ」
白山は突然倒れ込む
そんな彼を見て、刀たちは囁き始める
「今まで治癒を発動させなかったのに……」
「今度は無理を……？」
その言葉に、白山は違うと反論したかった
だが限界を越えての活動
反論する言葉は出てこなかった
動け、動けと白山は立ち上がろうと力を込める
それでも立ち上がることはできず、目の前にいる怪我人に手を伸ばそうとする、そんな時だった
「全く、無茶をする」
大包平だった
白山を自分の肩に乗せて、部屋から出ようとする
それを止めたのは、同じ古備前の刀派である鶯丸であった
「大包平」
「……強制された訳ではない」
「そうか」
嬉しそうに、だが寂しそうな声で返事をした
彼らには、この言葉だけで伝わる
多くの言葉は不要
だがそれでも信じきれるものではない、と鶯丸も大包平も感じていた
それでも今は、彼を信じよう
永く心を閉ざしていた２振りが再び顕れたのだ
ならやることは決まっている
「さて、茶でも入れてくるか」
この本丸に、永らく訪れなかった夜明けを祝して
久方ぶりの茶を淹れよう
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
