人を見る目 ページ5
「うわははは！」
豪快に笑い飛ばす則宗に、その場にいた全員が驚く
それに意を介せず、則宗は無意識に扇を開き口許を隠しながら審神者に歩み寄り、手を差し出す
「今までの主とは違うようだな。なら
「……ええ、よろしくお願いします」
違う、と反射的に思ったがそれを出すのは次期当主として育てられた葉月にとって、タブーであった
だから微笑みを返すだけであった
差し出された手を握り返すことはしなかったのだ
「おや、嫌われたかな？」
「いえいえ！触れられるのがお嫌かと思いましたので」
ぴり、と空気が変わるのをその場にいる誰もが読み取った
だが言わない
刀たちにとっては、ここで取り入られなければ監視がしづらく、審神者たちにとっては今後の活動がしづらくなる
そんな駆け引きをしていたのだが、審神者はふと何かに気が付く
「えっ、怪我してる！？」
その言葉に、刀たちは怪我をした刀を庇うようにして立ちはだかる
その顔はどれも険しいものだった
審神者はそんな彼らをじっと見ていた
数秒後、審神者は口を開く
「三日月」
「ここに」
「怪我直すのって、彼ら同士でも大丈夫なんでしたっけ？」
彼らはこの体の主を嫌い、怯えている
なら触れるのはまだ先だ
だからこそ、彼女はそう聞いた
「無論、可能だ。だが完治するには主の霊力が必要になってくる」
「了解。ならしばらくは彼らにやってもらいましょう」
「ほう。何故だ？」
則宗がそう問う
それに審神者はまた笑う
「触れるのが嫌でなければ私が致しますが」
「……なるほどな。考えたというわけか」
「ええ勿論。それに」
元の体の記憶が蘇ったのか、それともここの雰囲気で察したのか
「あなた方の怒りや嘆きは正当なもの。なら私がここで生まれ変わりましたーと言ったところで信用はできないでしょう」
それほどまでに、この体は恨みを買っている
ならば、と審神者は思ったのだ
「少し、時間を頂戴致します。必ずやあなた方に認められる当主となりましょう」
「主、ここでは本丸の主であってだな、当主というわけではないぞ」
「うえ！？違うの！？」
敬語であったり、素と思わしき言動だったりと、彼らは少しだけ後ずさる
すれ違いは始まったばかり
「ところで主、俺たちに敬語を使わなくてもいいんだぞ」
「ええー……いやでも……」
「主なのだから、気にしなくていい」
「なる……ほど……？」
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
