垣間見えたもの ページ4
「ふざけるなよ！！」
大和守が吠える
しかし毅然とした態度で審神者は答える
「私はあなた方を知りません。ですが、男は涙を見せたがらないものでしょう」
それが仲間であるのなら、尚更
審神者は三日月に「主」と呼ばれる度に「はい」と答えている
それでも信用ならない、といった視線が審神者を突き刺していた
どうしたものかと考えていたが、審神者は三日月の腰に挿されていた太刀を引き抜いた
「うわっとと、結構重いなあ。当然か」
その動きに、誰もが驚き駆け寄った
しかし、審神者のした行動で再び彼らは硬直する
「やっぱ鋏の方が良かったかな。まあ後で整えればいいか」
長かった髪を、ばっさりと斬ったのだ
三日月の本体で、器用に
「な、何して」
「今までと違うという証明を」
この審神者が髪を大事にしていたのは充分に分かっていた
さらさらして、引っ掛かるところなどなく、長い髪
これには刀たちも黙る他無かった
何かを呻きながら、刀たちは出ていく
その場に残るのは何故か静かに泣きじゃくる三日月と、今まで自分たちを蔑み罵っていた審神者の姿をした誰か
部屋を出て、一文字則宗が口を開く
「何者だ、あれは」
「別人のふりしてる主じゃない？」
口々に先程の主の様子について話し始める
「でも、あんなに大事にしてた髪をばっさり斬る、なんてことある？」
「そうだな……」
「今までお仕えしていたあの姿が偽り……という線は」
「無いだろうよ」
開いていた扇を閉じ、日光の方を向く
「僕が監査に当たった際の事を考えよ、坊主。あの女は、政府を偽るのだけは上手かった」
討伐数だけを見ていた訳ではないのだが、ここに来れば止められると考えていた一文字則宗
だが、暴走していた審神者を止める術は無かった
「……僕が監視を務めよう」
「しかし、御前」
「隠居した身だが監査官でもある。それに、止められなかった僕に責があろうよ」
ぐう、と押し黙る日光と緊迫した空気を変えるものがいた
「おはようございます！！」
元気よく、先程閉ざされた襖を開けるものがいた
「今は夜だぞ」
目を赤くした三日月が後ろから声をかける
「いいじゃないですか。暗い雰囲気を変えるには私が明るくいないと」
「今の段階では逆撫でするだけなのでは……」
それもそうかーと今までとは違う顔で笑いかける審神者
そんな様子を見て、則宗は早速気に入られようとする
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
