変わるものと変わらないもの ページ3
いつもそうだった、と三日月宗近は呟く
──ある日ついに、兄弟や身内のように接していた仲間を奪われた怒りを抑えきれなくなった刀たちが、謀反を起こす
その際にここの審神者は全く違う第３者として生まれ変わる
毎度何が起こったのか、と叫び声を上げていたあのお方
ついに、この本丸に来てくれた
俺たちを大切に扱ってくれる、同じ物としてでも大事に扱ってくれる、お方
さあ、会いに行こう
あのお方の名は葉月
決して呼ぶことは無いのだが、まあそれはそれ
本丸が襲撃され、皆が折れていった後に俺はこの本丸が苦しめられている時に戻る
もう俺は嫌だぞ主
誰かが折れるのを見たくはない
だからこれが最後なのだ
主も引っくるめて、この本丸を守る
それが俺の最後の仕事
それでも会いたい
会いたいのだよ、主──
三日月が襖を開けると、そこにいたのは普段の雰囲気とは異なる、審神者の姿
何名かはこちらを振り返り、三日月の名を呼んでいた
審神者が纏っていた嫌な気配は最早していない
じめっとしているのは、この空気だけ
審神者の周りだけが明るくカラッとしていた
「ある、じ」
その声には、反応してもらえなかった
彼女は自分を知らないのだ
当然と言えば当然だったのだ
だから彼は刀たちを押し退けて、彼女の目の前で跪いた
「ずっと、待っていたぞ」
その言葉の真意を知るものは、ここにいない
それでも涙を目に貯めながら三日月は再び呼び掛ける
今度は子供のように、甘えたような心の底からの声音で
「主、主。──な主」
「……私のこと！？」
「そうだ、やっと会えたな、主」
目の前で呼び掛けて、ようやく自分を言っていたことに気付いた審神者
ポロポロと泣いている三日月に、困惑こそしたものの、審神者は抱き寄せる
「はい。ここにいますよ」
安心させるような声で、審神者は優しく抱き締める
その光景に、多くの刀たちが更なる憎悪と困惑を与えた
それもそのはずだ
「三日月。なんで今更そいつを主って呼ぶの」
大和守が問う
その言葉を皮切りに、そうだそうだ！と他の刀たちも騒ぎ出す
だがその声は届いてなどいなかった
「皆さん。どうかお静かに」
口を開いたのは騒ぎの中心にいた審神者
「あなたたちの知るこの人とは、なんでしょうか」
「えっ」
「それ、は」
どことなく張り詰めた空気に、刀たちは動揺する
「しばらく外にいてもらえます？」
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作者名：とあるさにわ | 作成日時：2022年8月2日 0時
